見た目が風変りなカメ、密猟増加で絶滅の危機に 香港
ここに生息するカメの多くは、かつてはベトナム、タイ、台湾、中国本土などアジア各地に生息していたが、密猟によって個体数が激減。今では数百匹しか生息していない種もあり、それらのほとんどが香港にのみ生息している。
宋氏は自身の携帯電話に接続された40台の監視カメラで、これらの種の営巣地を監視している。ここでは以前、年間10件の密猟事件が発生していたが、今年2月だけで6件発生した。
「最近私が訪れたすべての川で、違法なカメ狩りの痕跡が観察された。我々は罠(わな)を見つけたほか、カメがいるはずの場所でカメを発見できなかった」と宋氏は説明した。
宋氏が保護しようと奮闘している個体群の中には、かつて薬用として珍重され、「亀ゼリー」にも使われたミスジハコガメもいる。現在ではその希少性と風変りな見た目によってエキゾチックなペットとして需要があり、密猟者にとっては価値が増すばかりだという。頭の金色のしま模様は繁栄の象徴とされ、極端な例では数十万米ドル支払う買い手もいる。
宋氏によると、このミスジハコガメは香港におよそ100匹残っていると考えられており、これは世界における最後の重要な個体群の一つだという。
同じような苦境に直面しているのがジャノメイシガメで、香港には200匹未満、中国本土には不明だがごく少数が生き残っているとみられている。ジャノメイシガメは後頭部に二つの目のような模様があり、捕食者を威嚇するために進化したのではないかと指摘する学者もいる。このカメもそのユニークな外見から、エキゾチックなペットを飼っている人たちの間で重宝され、闇市場で何百ドルも払って買い求められることもあるようだ。
オオアタマガメもまた、見た目が風変りな種で、エキゾチックなペットを求める人たちに人気がある。ワシのようなくちばし、ワニのような尾、甲羅に収まりきらないほどの大きな頭を持ち、香港には数百匹、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナムにはそれよりさらに少ない数が生息している。闇市場では最大1000ドルで取引されることもある。
活況を呈する産業
これまでに挙げた3種類のカメは、いずれもペットとして飼うのには適していない。宋氏によれば、生き延びるために自然環境を模倣した精巧な囲いが必要になるオオアタマガメは、とりわけ飼育には不向きだという。
そのうえ香港の法律では、絶滅危惧種のカメの所持は種類によって異なるが、最高で10年の禁錮刑と1000万香港ドル(約1億7800万円)の罰金が科される犯罪行為だ。
それでも、これらのカメは依然として人気があり、香港におけるカメの違法取引(絶滅危惧種と一般的なカメの両方を含む)の氷山の一角に過ぎない。
香港に拠点を置く民間調査機関のADMキャピタル財団は公的データを引用し、市当局は2015年以降、違法な密輸業者から少なくとも1万7900匹の生きたカメを押収したことを明らかにした(15年には1万2719匹以上のカメを乗せたスピードボートが検挙され、過去最大規模の押収となった)。
その後、合法取引は盛んとなり、ADMによると、香港では15年から22年の間に430万匹以上のミズガメとリクガメが輸入された。
ここでも、香港の人口密度が影響している。フェイスブックで「香港爬道 Hong Kong Reptile Channel」という爬虫(はちゅう)類に関するページを運営するボウイ・チャン・ウィンワイ氏(41)は、カメなどの小型爬虫類が人気なのは、多くの人が狭い生活空間で暮らしているため、こうした動物は小さな囲いで飼えるという認識があるためだと話す。