夏の北極圏、2030年代に海氷消失か 新研究が警告
夏に海氷が完全に消失すれば、寒冷期の海氷の形成ペースは格段に遅くなるだろうとミン氏は指摘する。気温が上昇すればするほど、北極圏に海氷がない時期も一段と長くなる公算が大きい。
化石燃料が依然使用され、温室効果ガスの排出レベルが上昇し続ければ、北極圏から海氷が消える時期は8月から10月までに広がる。そうした状況は80年代を迎えるより前に訪れるとミン氏は警鐘を鳴らす。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の21年の報告では、北極圏について「中度及び高度の温室効果ガス排出シナリオの下で、今世紀半ば近くには事実上の海氷なしになるだろう」と分析していた。
新たな研究から、その実現は排出シナリオに関係なく10年早まる可能性があることが分かったとミン氏は述べた。
夏季の北極圏からの海氷消失は、世界中に厳しい波及効果をもたらす。白色の氷は太陽エネルギーを地球から反射する機能を果たしているが、これが溶けてなくなるとより暗い色の海洋がさらに多くの熱を吸収し、温暖化を加速させる。「北極温暖化増幅」と呼ばれるプロセスだ。
ミン氏によれば、北極圏の温暖化は北半球の中高緯度地域に熱波や山火事、洪水といった極端な気候をもたらすと考えられる。海氷消失の想定時期が早まったことを受け、このような気候現象も予想より早く発生するとみられるという。