世界最長はアマゾン川? 国際科学者チームが長さを再測定へ
またサナダ氏によると、この遠征にはブラジル、ペルー、コロンビア、米国などの提携大学からの国際的な科学研究者らも参加するという。彼らはアマゾン川流域の伝統的なコミュニティーに持続可能な技術を提供するために、遠征のさまざまな段階で参加する。
サナダ氏は「これらのプロジェクトにより、コミュニティーの人々は、水の処理法、天然の材料を使ってより良い家を建てる技術、再生可能資源から電気エネルギーを生み出す方法、廃棄物処理法、電動モビリティー輸送などを学べる」とし、「現地の人々の生活は一変するだろう」と付け加えた。
今回の遠征で使用する太陽エネルギーとペダルで動くハイブリッドボートも、現在、現地のコミュニティーで使用されているガソリンで動くモーターボートに代わる、低価格かつ効率的で、汚染を減らす効果もある代替手段を実演する目的で採用した。
地元ブラジルの大学と共同開発したこのボートは、地元のバイオレジンと天然繊維で作られており、モーターも3Dプリンターで作られている。このボートのモーターは、遠征の終了後に現地に寄贈される予定だ。
武装した護衛に防弾キャビン
しかし、この遠征には危険も伴う。
サナダ氏は「この種の遠征では、さまざまなトラブルが発生する」とし、例としてボートが崩壊する可能性や自然のリスク(ジャングルにはジャガー、アナコンダ、毒ガエルなどの危険生物が生息する)を挙げるが、最も危険なのは現地人との接触だという。
旅の途中で麻薬密売人と遭遇する可能性もあるため、遠征チームは、違法採掘や麻薬取引で知られる地域を通過する際は地元当局の協力を得て、武装した護衛を付ける。またボートのキャビンは防弾・防矢の繊維で覆われている。
しかしサナダ氏は、この遠征でアマゾン川の長さに関する明確な答えを得られなかったり、アマゾン川が実際に世界最長の川だと証明できなかったりする可能性もあると認める。
米サンディエゴ大学の環境・海洋科学准教授で、河川システムや河川の測定が専門のスザンヌ・ウォルサー博士は、河川の測定には課題が多いとし、その原因として、河川は複雑で常に動いていること、そして認定された河川の水源や終点についてさまざまな解釈が存在することの2点を挙げる。
ウォルサー博士は、河川は「時間の経過とともにさまざまな形で変化」しうるとし、例として河川の流れ、水量、季節パターンの変化を挙げる。
「測定の対象が常に動いていると、全く同じ方法で測定しても結果は変わってくる」(ウォルサー氏)
またウォルサー氏は、「世界で最も長い川」など、世界一の地理的特徴は、国の威信を高め、観光収益も増える可能性があることから、「世界一」を主張する一定の人為的動機が存在することも指摘した。
知識の探求
サナダ氏は、今回の遠征がどのような結果に終わろうと、次回はナイル川を探索し、同じ技術・手法で川の長さを測定したいと話す。
ナイル川は北東アフリカを流れ、エジプトを経由して地中海に注ぐ。ナイル川も水源に関して議論があり、複数のアフリカ諸国が自国に源流があると主張している。
サナダ氏は、これらのプロジェクトを通して「アマゾンの重要性とそれを保存しなければならない理由」を示すことにより、地域の誇りを高め、国際観光を活性化し、さらにアマゾンにおける保護活動の促進にも寄与すると考えている。