低コストのスペースプレーン、実現の鍵はそり型発射システム

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ラディアン・エアロスペースのリビングストン・ホルダーCTOは過去にNASAのX33プログラムを担当したことがある/Brian Smale/Radian Aerospace

ラディアン・エアロスペースのリビングストン・ホルダーCTOは過去にNASAのX33プログラムを担当したことがある/Brian Smale/Radian Aerospace

ホフマン氏によると、ロケットがこの速度に到達するには、質量の95%を燃料に割かなければならず、その結果、燃料以外のものを積むスペースはほとんどなくなるという。「単段式で軌道に到達するのは夢だ」とホフマン氏。「しかしそのためには、ロケットの構造やエンジン、ペイロードがシステム全体の総質量の約5%を超えてはならない。そんなロケットを作る方法は分かっていない」

このため、軌道到達に使用されるロケットはこれまで全て多段式だった。ただ、スペースXのファルコン9のような現在のロケットは2段式で、アポロの月探査ミッションで使われた3段式のサターンVのような従来のロケットに比べ段数が少ない。

ホフマン氏の言う「ロケット方程式の専制」、燃料の重量を宇宙まで運ばねばならないという問題を解決するのは簡単ではない。ラディアンが考案した解決策は、ロケット推進式のそりだ。このそりは、長さ2マイル(約3.2キロ)のレール上を滑走し、マッハ0.7(時速約864キロ)まで加速した後、そりの上からスペースプレーンが飛び立つ。その後、スペースプレーンは自らのエンジンの力で軌道まで飛行する。

SSTOを可能にする三つの技術

ラディアンは、三つの重要な技術により、SSTO開発の前に立ちはだかるいくつもの障害を克服できると確信している。

一つ目の技術は、そり型発射システムだ。このシステムでは、そりに積まれている燃料が、そりに搭載されている3基のエンジンだけでなく、スペースプレーンのエンジンの動力源にもなっているため、スペースプレーンは離陸直前まで燃料タンクを満タンの状態に維持できる。

ロケット推進する「そり」から飛び立つラディアン・ワン/Radian Aerospace
ロケット推進する「そり」から飛び立つラディアン・ワン/Radian Aerospace

二つ目は着陸装置だ。この装置は、着陸のためだけに設計されているため、大幅な軽量化が可能だ。そして三つ目が翼だ。垂直ロケットには翼がないが、翼を付けることにより、軌道に向かって飛行する際に揚力が生じ、このそり型発射システムで必要とされる推力の量を減らすことができる。

ホルダー氏は、「軌道に到達したスペースプレーンに最も近いのはスペースシャトルだろう」と述べ、さらに次のように続けた。

「我々のスペースプレーンのベイ(貨物室)は(スペースシャトルよりも)小さいが、同種のミッションを数多く行うことができる。スペースプレーンの外面には、より丈夫な複合材を使用しているため、地球に帰還した後も、同じシステムを何度も再利用可能だ。また点検要件が少なく、ターンアラウンドタイムも短くて済む」

ラディアンによると、同社のスペースプレーンは最大100回の再利用が可能で、2~5人の宇宙飛行士が搭乗する。ミッション間のターンアラウンドタイムは48時間としている。ホルダー氏によると、年内にスケールモデルの飛行試験を行い、28年に実物大モデルの飛行試験(軌道には達しない)を開始するという。

ラディアン・ワンは、スペースシャトルと同様に、衛星などのペイロードを軌道に投入したり、貨物室に搭載した機器を使って、地球の監視・観測や防衛・軍事機関のための諜報(ちょうほう)活動といったミッションを行ったりすることも可能だ。

また、災害地域での人道支援でも役立つ可能性がある、とホルダー氏は指摘する。例えば、空港の滑走路が使用不能になった場合、制御された状態で大気圏に再突入し、貨物室からペイロードを投下することも可能だという。

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