画期的なクリーン燃料「ホワイト水素」の巨大埋蔵地、山脈の地下に存在か 新研究
ホワイト水素は地殻内での放射性崩壊など多くの過程を経て自然に形成される。しかし論文著者で独ヘルムホルツ地球科学センターの地質学者、フランク・ツバーン氏のチームが注目するのは「蛇紋岩化作用」だ。これは地球のマントルに由来する鉄分の豊富な岩石と水が反応することで水素を生み出す現象を指す。
こうした岩石は通常地中深くにあり、水と容易に反応するわけではないが、数百万年にわたる地質作用がそれらの岩石を地表へと押し上げることがある。具体的には大陸の分裂、衝突によってマントルを構成する岩石が浮上し、海洋水と反応する状況が生まれる。
科学者らはプレートモデリングを使って、こうしたマントルの岩石が「掘り起こされた」地点と年代、及びその量を突き止めた。その結果、前述のピレネー山脈やヨーロッパ・アルプス、ヒマラヤ山脈の一部がそうした地点に該当することが分かった。現地では大量の適温のマントル岩や深い断層がもたらす水の循環など、ホワイト水素を生み出す上での好条件がそろっているという。
これらのマントルの岩石は、各地の山脈で蛇紋岩化作用を引き起こすとみられる。その量が示唆するだけでも、ホワイト水素には「現状を大きく変える可能性がある」とツバーン氏は指摘する。
現在の大きな問題は、採掘可能な大規模蓄積地のどこにホワイト水素が集まっているのかを突き止めることになるという。マントルの岩石が地表付近に存在する地点を掘削し、そこに水を送り込むことで人工的に蛇紋岩化作用を起こすことも可能かもしれないと、ツバーン氏は付け加えた。
初期段階の探索は既に、フランスやバルカン半島、米国などで実際に行われている。