脳に有害な化学物質、子どもの睡眠中にマットレスから放出 新研究
(CNN) 乳幼児のマットレスや寝具から、発達障害やホルモン異常に関連する有害な化学物質や難燃剤が放出されていることが、二つの新たな研究によって明らかになった。
「生後半年から4歳までの25人の子ども部屋における空気中の化学物質を測定したところ、24種類以上のフタル酸エステル類、難燃剤、紫外線吸収剤の放出量が憂慮されるレベルに達していることが分かった」と、研究の主任著者であるカナダ・トロント大学地球科学部のミリアム・ダイアモンド教授は述べた。
研究は今月14日に科学誌「エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー」に発表された。子ども用ベッドの近くから最も高濃度の化学物質が検出されたという。
理由の検証を行うため、研究チームは新品の子ども用マットレス16点を検査し、これらが曝露(ばくろ)の主な原因であることを突き止めた。眠っている子どもの体温や体重が、有害物質の放出を増加させる可能性があることも分かった。
マットレスのブランド名は挙げられていないが、大手小売店で販売されているよく知られた低価格のマットレスが対象だったという。これらのマットレスはカナダで購入されたが、米国やメキシコ製の素材が含まれていたことから、北米全域で購入されるマットレスに、研究結果が該当する可能性が高いとダイアモンド氏は説明した。
米国化学工業協会(ACC)の製品広報部門のシニアディレクター、トム・フラナギン氏はCNNへのメールで、会員は安全性を真剣に受け止めているとしたうえで、「化学物質が含まれているというだけでは、リスクや有害作用を示すものではない」とコメントした。
測定されたフタル酸エステル類は、食品保存容器やシャンプー、化粧品、香水、おもちゃなどの消費財に含まれており、ホルモン産生をつかさどる内分泌系に影響を及ぼすことが知られている。米国立環境衛生科学研究所(NIEHS)によれば、思春期の早期化、生殖機能や生殖器、ホルモンの異常などにも関連しているという。
NIEHSのウェブサイトには、わずかなホルモンの乱れでも「発達および生物学的影響に重大な」影響をもたらす可能性があると記載されている。子どもは脳や体が急速に発達しているため、化学物質による影響に特に脆弱(ぜいじゃく)だ。
研究では、フタル酸エステル類が、男児の生殖器異常や成人男性の精子数やテストステロン値の低下などと関連していることが示された。小児肥満、ぜんそく、心血管疾患、早期死亡、がんとも関連があることが分かった。
今回の研究では、難燃剤の一種、有機リン酸エステル(OPFRs)も測定された。これらも幼児の生殖や発達、神経系の異常に関連していることが示されている。
あるマットレスには、TDCPPと呼ばれる有機リン酸エステルが1700ppm含まれていた。米国立医学図書館(NLM)のウェブサイトによると、TDCPPは発がん性物質として知られており、別のマットレスにも1600ppm含まれていた。
また、他のマットレスには、素材が現在の規制に準拠していることを示す認証ラベルが貼られていたが、米環境保護局(EPA)が禁止する5種類の難燃剤の一つ、ペンタクロロチオフェノール(PCTP)が1800ppm含まれていたことが判明した。
米消費者製品安全委員会(CPSC)は2017年に有機リン酸エステルの危険性を報告しているものの、難燃剤の分類を規定した全国的な法律は存在しない。