72メートルの素潜りに挑戦の男性、浮上後に死亡
同氏は2006年、浮上前に意識を失った。味覚も失ったまま回復していない。
素潜りで死者、負傷者が出る頻度について、はっきりとした統計はない。アウトドアスポーツ誌「アウトサイド」は「報告されない死亡例もある一方、記録されている数字には漁などほかの活動の一環として素潜りをするケースも含まれる」と指摘する。世界各地で素潜りに関連する死者数を調べたある推計では、05年が21人、08年が60人だった。
素潜りの大会を撮影する写真家のローガン・モック・バンティング氏によると、素潜りには危険がともなうが、本格的に取り組むダイバーたちは決して無謀なわけではない。別のダイバーが付き添い、万が一の場合には水面に連れ戻す。そこには医療チームが待機している。
「こうしたスタッフのプロ意識と絶え間ない訓練があってこそ、選手は最大限の自信を持って限界に挑戦し、トップクラスの結果を出すことができる。選手を取り巻く態勢は非常に強力だ」と、バンティング氏は話す。
ダイビング専門誌「サウス・フロリダ・ダイブ・ジャーナル」は、まず心拍数を落とし、全身の力を抜いて潜行するといった素潜りの段階を追ったうえで、「水中では魚の形の流体力学的な意味に思いをはせ、この陶酔感をなぜ今まで味わおうとしなかったのかと考えることだろう」と紹介している。