気分は巨匠? ルーブル美術館の複製画家を訪ねて
そもそも、現在のルーヴルで複製画を描くことを許されているのは、わずかに150人。誰でも応募できるが、資格を与えられるまで1年待ちの状況だ。
アーティストとして活動するのは、プロの画家や学生や退職者など多様な面々。管理のため、美術館側が3回にわたってすべての画布にサインと日付を記入し押印する。原画と同じサイズにする場合は、さらに複製画家自身の署名を入れなければならない。
画架と椅子は美術館から提供される。こうしてようやく、週5日、午前9時半から午後1時半まで制作にとりかかることができるのである。
多大な労苦を費やしてまで、既に完成している絵の複製を描くのは、なぜだろうか。
アブリリエ氏は「多くの時間を絵の前で過ごしていると、少しずつ理解が深まっていく」と話すが、当然、懐疑的な声もある。1887年のニューヨーク・タイムズ紙評は「哀れな愚か者。神のごとき巨匠の足元で、芸術のパンくずを拾っている」と辛辣(しんらつ)だ。