気分は巨匠? ルーブル美術館の複製画家を訪ねて
(CNN) シグリッド・アブリリエ氏はパリに住む65歳の元物理教師。よく笑う快活な女性だが、もう一つの顔を持つ。毎日4時間だけ、ルネサンス時代の偉大な画家ルーベンスに変身するのである。
アブリリエ氏はルーブル美術館に通う複製画家の1人であり、色彩から筆づかいまで、ルーベンスのすべてを忠実に再現しようと試みている。アブリリエ氏は「ルーベンスと一緒に生活している。ルーベンスその人になる、という感覚だ」と話す。
ルーブル美術館の大展示室には、このような複製画家が多く集まる。名画の前に陣取り、絵筆を手に身構えていると、子どもたちが興味津々といった体で質問を浴びせてくる。展示室が大勢の来館者でごったがえす中、一心不乱に絵筆をとる複製画家の姿は、どうしても目にとまる。
複製画を制作する伝統は、ルーブルが1793年に開館して以来、連綿と続いてきたものだ。セザンヌやピカソのような巨匠もかつて複製に携わったことがある。この流れをくんで今日に至るまで続いているわけだが、以前に比べると制作過程も随分と組織的になった。