若手映画監督が描く香港の近未来 希望か絶望か
香港(CNN) 英国総領事館の前で焼身抗議する女性、地元の政治家を暗殺して支配の拡大を図る政府、禁書を扱ったとして書店を攻撃する「少年親衛隊」——。香港に対する中国当局の締めつけ強化が懸念されるなか、2025年の香港を描いたとする映画「十年」が、多くの観客を集めている。
「十年」はボランティアが中心になって制作した低予算映画だ。昨年暮れに公開された当初はアート系映画館で単館上映されただけだったが、世界的なヒットを記録しているSF映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を上回る興行成績を上げた。
この成功により「十年」の上映は、香港全土に拡大。制作陣は海外の配給会社との交渉も進めている。監督の一人である伍嘉良氏(34)はCNNの取材に対し、「これほどの反応は予想していなかった」「香港の多くの人に響くものがあった」と話す。
「十年」がヒットするなか、香港では中国の指導者に批判的な本を出版していた書店関係者らが相次いで失踪。釈放を求めて数千人が街頭で抗議する事態に発展し、緊張が高まった。
香港警察は今月6日、失踪した5人のうち呂波氏と張志平氏の2人が香港へ戻ったと発表した。両氏とも政府や警察によるこれ以上の支援を望まないと表明し、詳細については語ろうとしなかったという。伍監督は「香港のことを本当に心配している」と話す。
「十年」は2025年を舞台にした短編映画数本で構成されている。なかでも衝撃的なのは「自焚者」で、英国総領事館の前で女性が焼身抗議する場面で始まる。