日本のスポーツ界で横行する指導者の暴力や虐待、子どもの被害実態を人権団体が告発
(CNN) バットや棒で殴られたり、顔面を平手打ちされたり、水中で頭を押さえつけられて窒息しそうになったり――。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は20日、日本でスポーツをする子どもが指導者から受けた虐待の実態について告発する報告書を発表した。
報告書は、少なくとも16競技の現役選手や引退した選手56人のインタビューと、757人を対象にインターネットで実施した調査をもとにまとめられた。
調査は24歳以下の選手や元選手を対象に今年3月~6月にかけて実施。スポーツに関連して身体的な虐待を直接的に経験したという回答は、半数を超えていた。
「日本では、子どもがスポーツのなかで暴力等の虐待を経験することがあまりにも多い。その結果、あまりに多くの子どもにとって、スポーツが痛みや恐怖、苦痛をもたらす経験となってしまっている」。報告書は冒頭でそう指摘している。
「数えきれないほど叩かれて」という報告書のタイトルは、23歳の野球選手の言葉から引用した。この男性は、中学の時に野球部の監督からみんなの前で殴られて、鼻血が出たという体験を語っていた。
別のプロバスケットボールの元選手は、2000年代半ばから後半にかけての高校時代にチームメートが毎日殴られていたと振り返り、「髪の毛引っ張られたり、蹴られたりもした。......(顔)が殴られすぎて青くなって。......血が出たことも」と証言した。
今回の報告書は、来年に延期になった東京オリンピックが開幕する予定だった週に合わせて発表された。
スポーツ法の専門家、山崎卓也弁護士は報告書の中で、「虐待事案の対処がこれほど難しい理由の一つは、選手が声を上げることが奨励されていないからだ」と解説する。「ややこしいのは、ほとんどの中央競技団体が元選手やスポーツ業界人の手で運営されていること。こうした人たちは、有力な指導者に物を申すことを本当に躊躇(ちゅうちょ)している」