40歳でフィギュア世界選手権ペア優勝、「最高齢」女性選手が伝えたいこと
(CNN) 度重なるけがに苦しみ、フィギュアスケートという競技の過酷さに燃え尽きたディアナ・ステラートデュデクは、2001年に引退した。現在活躍するエリート選手の多くは、まだ生まれてさえいなかった。
40歳になったそのステラートデュデクが、不可能を可能にした。カナダのマキシム・デシャンと組んだフィギュア世界選手権ペアで、自分の年齢の半分にも満たない選手たちを制し、史上最高齢で優勝を果たした。
フィギュアスケートのペアは、女性がパートナーの頭上に片手で持ち上げられ、宙高く放り投げられる。しかも何度もスピンしながら。
ステラートデュデクは、自身の歴史的勝利について、スケートに限らず目標を追い求めて達成するには遅すぎると思っている人たちを勇気づけたいと語った。
「潜在力を発揮する前にやめてしまわないよう、人々を勇気づけたい」。21日に優勝を果たしたステラートデュデクは記者団にそう語った。「スポーツの域を越えて、仕事やプロのキャリアのような分野でも」
危険な技と容赦ないけがの連続で、大抵のフィギュアスケート選手は20代半ばまでに引退する。
ステラートデュデクもそうだった。ジュニア時代にシングルで活躍し、1999~2000年の国際ジュニアグランプリファイナルで優勝。2000年ジュニア選手権では銀メダルを獲得した。
ジュニア時代にシングルで活躍したステラートデュデク選手/Courtesy Deanna Stellato-Dudek
しかし左足首の骨折や右足首の靱帯(じんたい)損傷、股関節の大けがなど相次ぐけがに襲われ、01年に17歳で引退した。
その後16年間は普通の大人として過ごした。エステティシャンとして成功し、結婚もした。国際大会で危険なトリプルジャンプに挑む必要はなくなった。
しかしやり遂げていないという思いは消えなかった。引退が早すぎはしなかったか。スケートでもっと達成できることがあったとしたら?
そこでスケートに復帰して、計り知れない挑戦に挑むことにした。30代でペアスケートを身に着け、競技の世界に復帰するという挑戦に。
ペアの女性は空中で自分の体の安定を保つ強さと、トリプルジャンプで投げ出されて細いエッジで氷の上に着地するコントロール力の両方が求められる。どちらに失敗しても惨事を招きかねない。
パートナー探しという問題もあった。16年、米シカゴ地域出身のステラートデュデクはフロリダに移り、14年のオリンピックに出場した選手で新しいパートナーを探していたネイサン・バーソロメイと組んだ。2人は国内大会で銅メダル2個を獲得したが、バーソロメイのけがのため、19年にペアを解消した。
それでもあきらめなかった。「自分の人生で出会った全てのコーチに電話して、誰かいないかと尋ねた」とステラートデュデクは専門誌に打ち明けている。
そうして出会ったのが、自分より8歳以上若いデシャンだった。やはりジュニア時代に成功を収め、ADHD(注意欠陥・多動性障害)という個人的事情も公にしていた。
地元カナダで優勝し笑顔を見せるステラートデュデクとデシャンのペア/Mert Alper Dervis/Anadolu/Getty Images
ステラートデュデクはシカゴの生活を捨ててモントリオールに移住。この賭けが実を結び、2人は40歳と32歳でまさかの世界チャンピオンとなった。
スケートに復帰した時点で、女性最高齢の世界王座を目指していたわけではないとステラートデュデクは言う。「しかし私はどこへ行っても最高齢だったので、自分が夢をかなえたら必然的にそうなることは知っていた」
最高齢を「とても誇りに思っている」といい、「たくさんのアスリートにもっと長く活躍してほしい」と話すステラートデュデクは、42歳で出場する冬季オリンピックを次の目標に据えている。