iPhone登場から10年、アップル関係者が語る誕生秘話
失敗寸前
完成するまでの3年の間に、プロジェクトは何度も瀬戸際に追い込まれた。「悪夢もあったし、最悪だったことも何度かあった。出荷をやめる寸前だったことも何度かある」とグリニョン氏は言う。
iPhoneは半導体からOSに至るまで、何もかも新しい製品だった。タッチ式という新しい操作方法を採用し、新しいアプリを最初から構築する必要もあった。
「それを考えると、製品としてのiPhoneは成功するはずがなかった」「社内に問題を解決するノウハウがあるのか分からない領域に踏み込んだこともある」(グリニョン氏)
技術問題だけではなかった。フェデル氏はiPhoneの試作品をドイツで旅客機の中に置き忘れて、それが何なのかを告げないまま、機内を捜索してほしいと頼む羽目に陥ったこともある。
結局、試作品は自分の座席のクッションにはさまっているのが見つかったという。
そうして迎えた正式発表の当日。発表会の最終デモでも、相次ぐトラブルに見舞われる可能性があった。いくつもの予備プランを準備して臨んだところ、本番のデモは問題も起こらず無事終了した。
その後のことは、だれもが知る通りである。