地下100メートルの北朝鮮――女性写真家が見た「世界で最も謎めいた地下鉄」
地下鉄の乗り心地はいかがでしたか。
まず気付いたのは、車内がとても静かということです。楽しそうな雰囲気は皆無で(誰一人会話をしておらず)、やや活気を欠いているという言い方もできるかもしれません。
しかし香港に戻って地下鉄に乗ると、ここでも乗客の間に会話がないことに気付きました。香港の電車はもっとうるさいですし、一見活気もありますが、乗客らに会話はありません。皆、スマートフォンに夢中になっています。平壌でもスマートフォンをいじっている人はいましたが、その数ははるかに少ないです。
では彼らは何をしているのかというと、周囲をきょろきょろ見回しています。まるで何かにおびえているようにも見えました。しかし、互いに会話をするわけではありません。北朝鮮の通勤風景は、ある意味、アジアの他の多くの都市の通勤風景と大変似ていると感じました。
地下鉄の乗客との交流はありましたか。
ある時、私は電車に乗り遅れそうになりました。ツアーの他の参加者はすでに電車に乗っていたのですが、私が女性車掌の写真を撮っている間に電車の扉がバタンと閉まってしまったのです。
すると私が写真を撮っていた車掌が運転手に向かって笛を吹きました。扉を開けて私を乗せるようにとの合図です。