変わりゆく香港麻雀事情、見つめ続ける牌彫師に聞く<上>
香港(CNN) 「落日は無限に魅力的だが、日の光は消え始めている」。こう話すのは香港最後の麻雀牌彫師の1人、何秀湄さん(59)だ。自身の業界が衰退していくのを目の当たりにして、悲喜こもごもの思いを表現するため中国のことわざを引用した。
1960年代には20人以上の麻雀牌彫師がおり、専門の業界団体まであった。何さんの推計によると、現在残っている彫師の店は自身のものを含め4~5カ所。他は売り上げ低迷のため閉鎖されたという。
牌彫りの技術は2014年、雨傘作りや民謡、カンフーなどとともに香港政府により「無形文化遺産」に指定された。
伝統の職人芸は衰退しつつあるのかもしれないが、麻雀そのものは活況を呈しているようで、現代風の新しい雀荘が香港中に出現している。
何さんの店は九龍半島のホンハムにある。壁には新聞の切り抜きや家族の写真などが所狭しと貼られている。
13歳のときから麻雀牌を手彫りしてきた。「店には子ども時代の思い出が詰まっている。私はここで育った」と話す。