イスラエルとカタール結ぶ初の直行便、W杯で実現 パレスチナ人も搭乗可能
テルアビブ(CNN) サッカーのワールドカップ(W杯)開催に合わせ、外交関係のないイスラエルとカタールを結ぶ初の直行便が実現した。
20日に運航された、イスラエルのテルアビブとカタールのドーハを結ぶ初の直行便。W杯観戦のため搭乗の行列に並んだ乗客180人はお祭りムードに包まれた。イスラエルの当局者が立ち会って国際サッカー連盟(FIFA)のサッカーボールが飛び交い、ゲートは風船のアーチに飾られてケーキまで登場した。
チェックインした乗客の1人は「歴史的だ。これは予想していなかった。もう二度とこんなことがあるかどうかは分からない」と感慨深げだった。
イスラエル人は通常、カタールを訪問することはできない。しかしカタールはW杯開催の条件としてFIFAと交わした契約に基づきイスラエル人を受け入れる必要があった。それでも直行便は当初の予定にはなかった。
11月になってFIFAは、パレスチナ人も搭乗できることを条件として、イスラエルとカタールを結ぶ直行便が認められると発表した。
パレスチナ自治区に住むパレスチナ人は通常、入手困難なイスラエル当局の特別許可を得なければ、イスラエルのベングリオン空港発の便に搭乗することはできない。このため国際便はヨルダンのアンマン経由で利用しているが、国境検問の通過に何時間もかかることもある。しかし今回はW杯のチケットがあれば、パレスチナ人も保安検査を通過後、テルアビブからの渡航許可をもっと簡単に取得できる。
FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長はこの発表にあたり、「イスラエル人とパレスチナ人が一緒に飛行し、一緒にサッカーを観戦できる」と述べていた。
直行便はキプロスのタス・エアウェイズが6往復(12便)を運航する。飛行時間は2時間45分。需要が多いことから、同航空はさらに3往復増やす調整を進めている。
ただ、初の直行便の乗客は大部分がイスラエル人で、占領地から来たパレスチナ人はいなかった。W杯観戦旅行を手配しているアミール・アッシ氏によると、直行便の運航が直前になって発表されたため、ほとんどのパレスチナ人は既にヨルダン経由の渡航予約を済ませていたという。
匿名を条件にCNNの取材に応じたパレスチナの当局者2人は、パレスチナ人がベングリオン空港発の便に搭乗できるという合意の成立が遅すぎたと指摘。いずれにしても、W杯観戦には多額がかかることから、ほとんどのパレスチナ人にとっては何も変わらないと言い添えた。
一方、W杯観戦に出かけるイスラエル人には、控えめな行動が呼びかけられている。イスラエルの有名サッカー選手を起用した広告では、カタールで飲酒したり地元の人たちと口論したりしないよう注意を促し、搭乗手続きの際に緊急連作先の入ったカードが手渡された。
カタールはW杯の期間中、普段は外交使節を置かないイスラエルがドーハに小規模な領事館を一時的に設置することを認めた。パレスチナ人はドーハのパレスチナ大使館を利用できる。
もっともファンが目を向けているのはボールであって、政治ではない。初の直行便に搭乗する男性は「サッカーに政治は関係ない。地元の人たちと知り合いたい。相手が政治についてどう思っていようと気にしない。私は楽しむために行く」と話していた。