旅客機の2段式シートの座り心地は? CNN記者が体験
次の段階
もともとシェーズロング・シートは、ヌニェス・ビセンテ氏の母校デルフト工科大学で現在考案が進む新しい航空機コンセプト「フライングV航空機」のために考案された。
そして今、同氏はこのデザインがボーイング747、エアバスA330、その他中型や大型のワイドボディー機に実装可能だと考えている。
ヌニェス・ビセンテ氏の志は高く、このデザインが実現すると確信している。だが得てして一風変わった機内シートのアイデアは、コンセプト段階から実用化に至らないことも認めている。実用化までのプロセスは長く、業界の厳格なルールや規制がハードルになる場合もある。
それに加え、デザイナーの斬新なアイデアが次々登場しているにもかかわらず、機内のエコノミーシートは何十年も変わっていない。
「たくさん意見をもらった中で、『これまで変わらなかったものをなぜ変えるのか?』という意見があった」とヌニェス・ビセンテ氏も認める。「旅行者は最悪なエコノミークラスの座席でも旅をしているのに、なぜ今さら良い選択肢を与えるのか? これは金になる。結局のところ航空会社が目指しているのはそこで、フライトをより快適にすることではない」
それでもこの機内シートのデザイナーはすでに次の段階に進み、現在のバージョンよりも軽量化した構造の開発を目指している。
航空会社や座席メーカーと提携して、実現させるのが同氏の願いだ。
「今は市場に自分たちのアイデアを紹介しているところだ。市場をひきつけて、次に何をすべきかを教えてもらっている」(ヌニェス・ビセント氏)
経験豊富な業界専門家との協力も視野に入れるこのプロジェクトも、始まりはヌニェス・ビセント氏の実家の寝室からだった。同氏の家族は今もプロジェクトの力強い味方だ。
AIXでも、同氏は両親を引き連れていた。両親はワゴン車にシェーズロングのプロトタイプを積んでヨーロッパを横断し、同氏が座席のセッティングをするのに手を貸した。
「もちろん最初のうちは、このプロジェクトが今のようにここまで大きくなるとは誰も予想していなかった。だが両親は私が何か形にできるだろうと思っていた」(ヌニェス・ビセンテ氏)
「もし当時取材を受けていたら、単なる大学のプロジェクトですと答えていただろう。でも今は、これだけの苦労と大勢の人々の努力があって――むしろこれは現実だと答えるだろう。僕らの目には、これがエコノミークラスの未来として映っている」