日本で大人気のビーフコロッケ、予約30年待ち
(CNN) 兵庫県高砂市にある家族経営の精肉店「旭屋」で冷凍の神戸ビーフコロッケを注文すると、届くまでに30年かかるという。
タイプミスではない。30年だ。
大正15(1926)年に創業以来、旭屋は神戸牛をはじめとする兵庫県産の食肉製品を数十年にもわたり販売してきた。ビーフコロッケが店頭に並ぶようになったのは、第2次世界大戦が終わり数年経った頃だという。
だが、このビーフコロッケが注文してから届くまでに膨大な時間がかかるようになったのは、インターネット上でセンセーションが巻き起こった2000年代初頭になってからだ。
採算度外視の事業アイデア
旭屋が販売する神戸ビーフコロッケは4種類。その中の「極み」が30年待ちの人気商品で、「プレミアコロッケ」は現在4年待ちだ。
3代目店主の新田滋さん(58)によると、インターネット通販を開始したのは1999年で、当時はお試しで極みコロッケを販売していた。
兵庫県で育った新田さんは、幼い頃から父親と共に地元の牧場や牛の競り市に足を運んでいた。
94年、新田さんが30歳の時に父から店を引き継いだ。
数年間、電子商取引(EC)を試してみたが、最高級の牛肉をネット通販で高額購入することに躊躇(ちゅうちょ)するお客さんがいることに気づいたという。
そこで、新田さんは大胆な決断に出る。
極みコロッケを1個270円で販売することにしたのだ。中身の牛肉だけでも1個400円の費用がかかっていた。
旭屋の安くておいしいコロッケを堪能した客が、願わくは同店の神戸牛も購入してくれれば、という狙いがそこにはあった。
当初は経済的な損失を抑えるため、自社の厨房(ちゅうぼう)で生産するコロッケの個数を毎週200個に限定した。
旭屋では知り合いの農家が育てた牛肉を取り扱っている。神戸ビーフも神戸ポークも兵庫県産の肉しか売らない。それが、新田さんが店主になる前からの旭屋のこだわりだ。
事実、新田さんの祖父は和牛の産地として有名な兵庫県三田市に、自ら手押し車を押して商品を調達しに行っていた。
祖父の代から、旭屋は地元の牛肉生産者とつながりがあったので、県外から牛肉を仕入れる必要がなかったのだという。