廃墟の村を丸ごと購入、「眠れる森の美女」が目覚めるのはいつに イタリア
過去を保存
「旧集落はほとんどが私有地だが、年間を通して無料で入場でき、毎年5万人ほどの観光客が訪れる。その多くが、海岸の暑さから涼しさを求めて夏に訪れる」とダンジェロ氏は説明する。
村は海岸沿いの人気の町マリーナ・ディ・カメロータやパリヌーロ、ワインの産地であるバジリカータ州にも近い。
祭りの時期には、俳優や動物が登場するキリスト降誕のシーンが小さな路地に広がり、自家製パンや地元で作られたヤギのチーズ、ワインなどの屋台が並ぶ。
地元ガイドによるツアーでは、大聖堂や礼拝堂、敵の襲撃に備えて建てられた見張り台、かつて領主が所有していた堂々たる貴族の宮殿などの遺跡が見学できる。
また、1800年代に米国をはじめとする海外に明るい未来を求め、村を離れた家族の遺品が展示されている移民博物館もある。
ダンジェロ氏によると、現在ペンシルベニア州に在住する元村民の米国人の子孫たちが、定期的に先祖の故郷であるこの村を訪れているという。
「村を訪れる人のほとんどがまた戻ってくる。ここは 『思い出の地』であり、私たちの目標は、可能な限りこの地を最高の方法で価値あるものにすることだ」とダンジェロ氏は言い添えた。
一連の階段でつながった石造りの空き家の多くは、屋根が崩れ、窓があった場所には穴が開き、ドアの蝶番(ちょうつがい)は外れ、壁の大きな割れ目からは木や草が生えている。
ダンジェロ氏は、個人または意欲的な地元の有志から必要な資金が集まれば、この村の独自性を生かした小規模で持続可能な改修を行いたいと考えている。
「崩れかけた2階建ての家は、職人のブティックやアートラボにすることも、集落のレイアウトや平和、静寂を尊重しながら、周囲に溶け込むような少人数用のゲストルームにすることもできる」とダンジェロ氏は述べている。
村の購入は大きな決断であり、その再生プロセスは簡単なものではない。だが、ダンジェロ氏らは後悔しておらず、イタリアの衰退しつつある町を守るのは、自分たちのような人々の責務だと感じている。
「このように放置された土地を救うことは、私たち全員の義務だ」とジロッキ氏は言う。「これら古い村は、この素晴らしい国の根幹をなしているのだから」