仏高速列車TGV、欧州鉄道の新時代を切り開く
「南ヨーロッパ大西洋線」の最終段階では、パリ―ボルドー線が南のスペイン国境まで伸びる。いずれTGV路線がスペインの高速鉄道網とつながれば、パリから人口密度の高いサン・セバスティアン周辺のバスク地方、さらにマドリードへとつながる高速直行ルートが完成する。
また国際旅行者にとっても重要なのが、論議を呼んでいる総工費250億ユーロ(約3兆8000億円)のリヨン―トリノ線だ。この路線の特徴は、サボイアルプスの地下にある全長約58キロの長いトンネルだ。フランスのリヨンとイタリアのトリノの間には、すでに利用者数の多い鉄道路線があるが、山岳地帯を走るため、定員と速度が厳しく制限されている。
一方、フランス政府は(多くの圧力を受け)同国南部のモンペリエとペルピニャンを結ぶ高速鉄道路線の建設計画にゴーサインを出した。モンペリエとペルピニャンがつながれば、ロンドンからスペイン南部のマラガとセビリアに至る、欧州最長の連続した高速路線が完成する。現在、パリ―バルセロナ間を走るTGVは、モンペリエとペルピニャンを結ぶ区間だけ通常の線路を走る必要があり、所要時間が1時間延びる上、速度の遅いローカル列車による遅延のリスクがある。
モンペリエ―ペルピニャン間を結ぶ高速路線が完成すれば、これらの問題は解消し、全長が1600キロを超える見事な高速鉄道路線が完成する。モンペリエからベジエまでの区間は34年、そしてベジエからペルピニャンまでの区間は40年までに完成予定だ。
世界に輸出されるTGVの技術
TGVは、フランス語で高速列車を意味する「Train á Grand Vitesse」の略で、1981年の開業以来、フランスにとって大きなサクセスストーリーになっている。TGVの開業により、長距離路線の移動時間は短縮され、パリ以外の地域の経済発展が促進された。またフランスの鉄道業界は、(TGVで培った)高速鉄道技術、スキル、経験を世界25カ国に輸出しており、TGVをベースにした列車は、スペイン、モロッコ、韓国、台湾、イタリア、米国で運行されている。またフランスと英国、ベルギー、オランダ、ドイツを結ぶユーロスターの国際列車もTGVがベースになっている。
TGV―MはTGV車両の最新モデルで、前モデルのTGVデュプレックスと比較し、エネルギー効率が25%高く、価格と運行費用は20%安く、レイアウトやデザインの柔軟性が高く、収容可能な乗客数は20%増えるとされている。また列車が寿命を迎えた時、車両に使用されている材料の9割以上がリサイクル可能だ。