「ミシュラン審査員お断り」 フランスに新店舗、トップシェフの思い
ただ、審査員が身分を明かさずに来店しないという保証はなく、ミシュランガイドの次の版に同店が掲載される可能性はある。ミシュランは2019年版に、オーナーシェフが非掲載を求めていた韓国のレストラン「エオ」を掲載した過去がある。
新しい店で8皿のコース料理を注文した客は、ベイラ氏本人に会う機会もある。実際のところ、自分と握手するためだけにムジェーブの店に来てくれる客も多いとベイラ氏は話す。
自分には1セントのもうけもないというベイラ氏は、ただ採算が合って、従業員にそれなりの給与が支払えればそれでいいと語り、ほかにも多数経営しているレストランから収益は確保できており、ミシュランとの確執の影響もないと言い切った。
ミシュランに異議を唱えたシェフはベイラ氏にとどまらない。発行されるまでの数カ月間のとてつもないプレッシャーについては多くのシェフが口にしており、一切掲載しないでほしいというシェフも少なくない。
17年にはシェフのセバスチャン・ブラス氏が、フランス中部で経営する店の非掲載をミシュランに求めた。「人生はあまりに美しくあまりに短い」と同氏は言い、自由の代償としての非掲載と位置付けていた。しかしブラス氏の予想に反して、店は二つ星を獲得して2年後に再び掲載された。
ミシュランの審査を拒んでいる別の店のシェフは、ミシュランから電話がかかってきたものの、「数える星は、料理に魅了されて席を立つ際にお客様の目に浮かぶ星の数のみ」と強調する。
ミシュランは今もフランスで重視されている。24年版にはフランスのレストラン639店が掲載された。