旅先で生まれた６人の友情、９０年代と同じポーズの写真を３０年後に再現

（ＣＮＮ） メキシコのリゾート地、カボサンルーカスで１９９４年に撮影されたビーチ写真。並んで立つ３人の男性はそろって腕を組み、ベースボールキャップを後ろ向きにかぶっている。カラフルなトランクス水着と派手な柄のシャツが９０年代を象徴する。

「記念すべき写真 」と形容するのはスコット・ベリンガーさん、ジョージ・ギルバートさん、ティム・コーバーさん。当時３０代前半だった３人は、それぞれのパートナーのパティ・コーバーさん、チェリー・ベリンガーさん、デビー・ギルバートさんと共に、カボサンルーカスで休暇を過ごしていた。

実はこの３カップルは、旅行中にそれぞれ知り合って親しくなった。

カリフォルニア州で医師をしているティムさんとパティさんは、２０代だった１９８６年、メキシコのカンクンで米国人のスコットさんとチェリーさんのカップルと知り合った。すぐに意気投合した４人はその後のカンクンでの休暇を一緒に過ごし、次の旅行の計画も立て始めた。

数年後、再び一緒に旅行に出かけた４人は、機内で別の米国人カップルのジョージさんとデビーさんに出会う。６人になった一行はそれからも旅を続けた。

偶然にも全員がカリフォルニア州在住で、日々の生活でも支え合ったり冗談を交わしたりして友情が続き、やがて親友同士になった。

「みんなで世界中を旅行した」とティムさんはＣＮＮ Ｔｒａｖｅｌに語り、「選んだ家族だから」とチェリーさんは言う。

１９９４年に撮影されたティムさん、パティーさん、ジョージさん、デビーさん、スコットさん、チェリーさんの写真。６人で過ごした最初の休暇のひとつでの１枚。/Tim and Patty Korber/George and Debbie Gilbert/Scott and Cheree Behringer

１９９４年にカボサンルーカスの海岸で撮影した写真は、６人の変わらない友情の証しになった。

「僕たちは兄弟みたいなもの」と話すジョージさんは、その絆を表すのがこの写真だと言う。ティムさんは「写真の山からこれを引っ張り出して机の上に飾ったのはスコットだった。『これって僕たち３人のすごくいい写真だね』と言って」と回想した。

その後の旅行でも、３人で腕組みをしてベースボールキャップを後ろ向きにかぶるポーズを何度も再現した。

「どんな時でも無意識にこれを再現できるの」とパティさんは笑う。パティさんとチェリーさん、デビーさんが加わることもあるという。

そして２０２４年、この愛すべき写真を「公式に」再現する機会が訪れた。デビーさんとジョージさんの息子が、カボサンルーカスで結婚式を挙げることになったのだ。両親が何十年も前に、ベリンガーさん夫妻、コーバーさん夫妻と共に休暇を過ごしたあの場所で。

「それで、あのポーズを再現して、１９９０年代と同じ服装にしてみよう、ということになった」とティムさんは説明する。

その計画がまとまったのは、結婚式のわずか１週間ほど前。準備にかけられる時間はあまりなかった。

「みんなで『あごひげを生やそう』とか言い合った」とティムさんは振り返る。１９９４年の写真では全員にひげがあった。「僕は『ひげを生やすんだったら６カ月くれ。１週間もないんじゃ無理だよ』という状態だった」

スコット・ベリンガーさん、ジョージ・ギルバートさん、ティム・コーバーさん３人はちょうど３０年後、カボサンルーカスの同じ場所でお気に入りの写真を再現した/Tim and Patty Korber/George and Debbie Gilbert/Scott and Cheree Behringer

結局、ティムさんはひげなしになったものの、９０年代のベルトバッグにカラフルな水着とタンクトップをそろえ、若かった頃の自分たちの休暇中の姿を再現した。

スコットさんとジョージさんもクローゼットを探って９０年代風の衣類を見つけ出し、ウェディング用のシャツやジャケットと一緒に荷物に詰め込んだ。

カボサンルーカスに到着すると、３人はすぐビーチに直行。パティさんはカメラ係を担当し、チェリーさんとデビーさんは最初の写真を撮影した場所探しを手伝った。

何度かビーチを行ったり来たりした末に、ようやく撮影場所を突き止めた。

「３人が同じ場所に立った。けれど背景が少し違っていた。２回の写真撮影の間にハリケーンがあったから」とパティさん。「最初の写真の背景にあった小屋が全部、ハリケーンで吹き飛ばされていた」

場所が決まるとパティさんが夫と２人の友人を手伝って位置を決めさせた。チェリーさんとデビーさんも手を貸して最初の写真と見比べながら、できるだけ細部までの再現を目指した。

ビーチでは、結婚を控えたジョージさんの息子も友人たちと過ごしていた。９０年代の格好をした父親と親友を見つけた息子は、何が起きているのか知りたがった。

ジョージさんは言う。「我々はこの背景にある歴史を語って聞かせた」「すると息子と２人の親友が、カボを離れる前に全員で同じポーズをした。彼らはその友情に支えられ、同じポーズをしてこれを受け継いでくれるだろう。だからこれは我々の世代だけでなく、未来の世代にとっても象徴的なポーズになった」

「著作権は我々にある」とティムさんは冗談を飛ばした。「だから著作権料をもらわなくては」

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最初の写真と再現した写真を見比べた６人は誇りを感じた。再現写真の出来の良さだけでなく、６人の変わらない友情を実感した瞬間だった。

「こんなことが起きて生涯の友人になる確率は、きっと１０００万分の１しかない」とジョージさんは感慨深げに語る。「機内で出会って絆ができ、みんな同時に家族ができるなんて」

出会ってからの数十年で互いの結婚式に出席し、仕事や私生活の浮き沈みを見守り、節目の誕生日を祝い、子どもたちも一緒に育ち、孫もできた。

６人は一緒に旅をするのが大好き。これは昨年のティムさん、パティーさん、ジョージさん、デビーさん、スコットさん、チェリーさんを捉えた１枚だ。デビーさんは、カボサンルーカスには「特別な思い出」がたくさんあると話す/Tim and Patty Korber/George and Debbie Gilbert/Scott and Cheree Behringer

今は６人で次の旅を計画しながら、あの「象徴的なポーズ」をまた再現できればと考えている。