トランプ大統領、初の拒否権 非常事態宣言無効は「国民を危険に」
(CNN) トランプ米大統領は15日、国境の壁建設の資金ねん出を目的とした国家非常事態宣言を無効にする議会決議に対し、「無謀」かつ「危険」だとして拒否権を発動した。トランプ大統領による拒否権行使は初めて。
トランプ氏は拒否権行使前にホワイトハウス執務室で、「議会には決議を通す自由があり、私にはそれを拒否する責務がある」と述べた。
上院の採決では、民主党に加え共和党からも12人が賛成に回り、非常事態宣言による議会の迂回(うかい)と壁建設費確保の動きをけん制した。
トランプ氏はこの決議について「無数の米国民を危険にさらす」ものだと強調。国境で「これ以上に大きな非常事態が生じることはそう多くない」と主張した。
拒否権行使に当たっては、税関・国境警備局(CBP)の当局者や、肉親を不法移民に殺害された家族がトランプ氏を取り囲んだほか、バー司法長官も同席した。
議会では、共和党議員の中からも今回の非常事態宣言に反対する声が上がった。一方、CNNが15日に入手した文書によると、司法省は今月上旬にマコネル上院院内総務に書簡を送り、大統領の権限を強く擁護していた。
ボイド司法次官補は書簡の中で、「大統領は南部国境に関する非常事態の宣言に当たり、自身の裁量内で十分対応した」と説明。さらに「大統領が非常事態宣言で現在の状況を『国境警備と人道上の危機』と表現したのは妥当だった」「国境での危機は全く新しいものではないが、緊急事態と位置付けられる」としている。
トランプ氏は15日、ツイッターで「強力な国境警備と壁に果敢に賛成票を投じた全ての上院共和党議員に感謝したい」と述べた。
拒否権行使を受けて決議は下院に戻り、1週間の休会の後に審議が再開する予定。下院では拒否権を覆すのに必要な3分の2の支持は集まらないとみられている。