ポンペオ長官、人種問題で沈黙 米国務省内で不満噴出
ワシントン(CNN) 米国の黒人男性が警官に押さえつけられて死亡した事件に端を発する人種間の不公正を糾弾する抗議デモは今や米国のみならず世界的な広がりを見せつつあるが、トランプ政権の中枢にいながら問題について沈黙し、具体的な指針を示そうとしないポンペオ国務長官に対して、外交を担う米当局者らから不満や戸惑いの声が上がっている。
ポンペオ氏は1週間以上前のFOXニュースのインタビューで、死亡したジョージ・フロイドさんの遺族に弔意を表し、フロイドさんの首をひざで押さえつけた警官の行動を「忌まわしい」と非難した。しかしこの後は、公の場で抗議デモ等の人種の問題についてほとんど発言していない。
米国内や諸外国で職務に当たる米外交官らは、こうした状況に困難を感じている。世界各国の外交官らから米国内の問題について質問を受けても、国務省としての見解を伝えることができないためだ。
米国の外交官の中からは、ポンペオ氏が自身の政治的利益やトランプ大統領との関係を重要視するあまり、国務省の求める外交方針の提示や指導力の行使がなされていないのではないかと懸念する声も上がる。
米外交官の1人は、「ポンペオ氏は文字通り、この問題には触れないと決めこんでしまった」「こうした姿勢は我が国のイメージに世界中で影響を及ぼす」と指摘。本来なら、米国社会の問題に対する認識を明確に示しつつ、その解決に向けて粘り強く取り組んでいることを発信するべきだと強調した。また、自らの下で働く外交官への支援も表明してほしいがそうした言葉は一切聞こえてこないとも述べた。
ポンペオ氏の沈黙にとりわけ心を痛めているのが、外交に携わるアフリカ系米国人の当局者たちだ。先週末、これらの当局者100人以上がオンライン会議でこの問題について意見を交わした。参加者2人によると、会議では個々の当局者らから、無言を貫くポンペオ氏について苦悩や苛立ちを訴える声が上がったという。
このほか、国務省内での人種的な多様化を進める必要があるとして参加者の意見が一致する場面もあった。米外交当局者の代表団体がまとめた統計によると、国務省におけるアフリカ系米国人の当局者の占める割合は、ポンペオ氏の国務長官就任以降それまでの7.95%から7.1%にやや減少した。