マスクを拒む米国人 その歴史的背景とは
(CNN) 米国人がマスクの着用に抵抗を示す姿は、外国人の目には自分勝手としか見えないかもしれない。だがその背景には、「政府の権力」と「個人の自由」のせめぎ合いという建国当初からの歴史がある。
米国の政治的DNAには抵抗の精神が組み込まれている。例えば、ノースカロライナ州で新型コロナウイルス感染対策の行動制限に反対を訴えてきた女性活動家は最近、フェイスブックに投稿した動画の中で、マスクをフライパンで焼いてみせ、着用を義務付けるのは「自由の侵害」だと主張した。
アリゾナ州の男性は新型ウイルス感染症で家族を亡くしたにもかかわらず、マスクは着けないと言い張っている。
最近マスクを義務化したばかりのカリフォルニア州では、その議論をめぐって保健当局者が脅迫を受けたという。
トランプ大統領のマスク嫌いもよく知られている。マスクで顔を覆うのは弱さやリベラル主義の表れで、米国の精神に反すると主張してきた。先週のインタビューでも、マスクを着ける国民には自身を困らせようとする政治的意図があると批判した。
社会に対立軸を作って政治利用しようとするのはトランプ氏の常套(じょうとう)手段だが、マスクが論争の火種になるのはこれが初めてではない。約100年前に起きたスペインかぜの流行でも、マスク義務付けに反対運動が起き、着用を呼び掛けた医師が中傷を受けた。
政府がシートベルト着用や禁煙、銃規制などを後押ししたケースでも、同じような議論が繰り返されてきた。
歴史の教訓は明らかだ。マスクを着けたがらない米国人に対し、着けろと言うこと自体はいいだろう。だが政府がそんな指図をしたら、もめごとになるのは間違いない。