バイデン次期政権の人事発表、5つのポイント
(CNN) 米大統領選で勝利が確実となったバイデン前副大統領の政権移行チームは23日、次期政権の一部閣僚やホワイトハウス高官の人事を相次いで発表した。その顔触れなどから明らかになったポイントをまとめた。
これまで発表された一部の閣僚とホワイトハウス高官の人事/Source: Getty Images, Associated Press, Shutterstock / Graphic: Janie Boschma, Alberto Mier, Heather Fulbright and Cody McCloy, CNN
1.知名度より実務経験を重視
発表されたメンバーの中に州知事や上院議員らは見当たらない。政界で名を知られた人物でなく、担当分野の専門家が選ばれたことは明白だ。
その背景には、党としての現実的な判断もある。民主党は今回の選挙で勢力拡大を果たせなかった。このうえ知事や議員の政権入りでそのポストが空席となり、補欠選挙で共和党に奪われるような事態は避けたいところだ。
さらにトランプ大統領が敗北を認めようとしない現状では、ホワイトハウスや各省庁での実地訓練も期待できない。
国務長官に指名されるアントニー・ブリンケン氏、国土安全保障長官に就く見通しのアレハンドロ・マヨルカス氏はいずれも知名度こそ低いが、それぞれの分野で豊富な経験がある。
2.多様性確保を優先
財務長官にジャネット・イエレン氏、国家情報長官にアブリル・ヘインズ氏と、どちらも初めて女性が起用される。イエレン氏は女性初の連邦準備制度理事会議長となった経歴を持つ。
キューバ生まれのマヨルカス氏は、中南米系移民で初の国土安全保障長官となる。
バイデン氏は選挙戦を通して、政権の人事に米国民の多様性を反映させると約束してきた。移行チーム自体も非白人が半数近く、女性が過半数という構成になっている。
3.「トランプ主義」を完全に否定
トランプ氏が地球温暖化を否定し、国際的な対策に向けたパリ協定から離脱したのに対して、バイデン氏は国家安全保障会議(NSC)に気候変動問題を担当する大統領特使を新設。オバマ前政権で国務長官を務めたジョン・ケリー氏を充てると発表した。
それぞれの職務にふさわしい担当者を指名しようとするバイデン氏の方針自体、トランプ氏が大口献金者や経験不足の取り巻きを要職に就かせてきた態度とは対照的だ。
トランプ氏がかつて外交経験の乏しい元テレビキャスター、ヘザー・ナウアート氏を指名しようとしたこともある国連大使のポストには、外交官出身で国務次官補の経験を持つリンダ・トーマス・グリーンフィールド氏が起用される。
4.民主党内の各派閥に配慮
バイデン氏は先週、財務長官の人事について「党内の進歩派から中道派まで、あらゆる派閥に受け入れられる人物にする」と異例の予告コメントを出していた。
中道派の同氏は民主党候補に決まってから常に、進歩派の発言権を尊重するなど、党内の対立を抑える姿勢を示してきた。
大統領補佐官(国家安全保障担当)に就くジェーク・サリバン氏は中道派だが、進歩派からも一定の支持を得ている。
5.着々と進む移行準備
トランプ氏が不正選挙を訴え続ける一方で、バイデン氏は政権移行への準備を着々と進めている。
首席補佐官に長年の側近、ロン・クレイン氏を起用すると発表してから2週間足らずで、ホワイトハウス高官の顔触れはほぼ固まった。23日の発表で外交、国家安全保障分野のポストも埋まってきた。
その素早い動きは国内外に向けて、新政権が万全の準備態勢で発足するというはっきりしたメッセージを送り出している。