米国の銃販売、昨年は過去最高を記録 社会・政治不安で急増
こうした状況の中で銃の販売店や射撃場は活況を呈している。
ジョージア州で3人の子どもを育てるシングルマザーのサイラ・アーズさん(38)は、購入したかったグロック製のピストルが売り切れだったことから、スミス&ウェッソン製のピストルに落ち着いた。
これまで銃の必要性を感じたことなどなかったとなかったとアーズさんは振り返り、「私たちは混乱の中で暮らしているように思える。これでその混乱をある程度コントロールできる」と安堵(あんど)する。
アーズさんが銃を買ったことを知った友人や、銃販売店に一緒に行った友人も、新しい銃を調達したという。
アトランタ市内で銃販売店を営むケン・ベイエさんによると、このところは従来とは違った客層が来店するようになり、女性やカップル、子どもを持つ親などが増えているという。
米コンサルティング会社スモール・アームズ・アナリスティクスは、業界の統計や身元調査の件数をもとに、2020年は2300万丁近い銃が購入されたと推定/Martin Savidge/CNN
全米アフリカ系米国人銃協会(NAAGA)創設者のフィリップ・スミスさんは、5年前まで自分が銃を持つことなど想像もしなかった人が、銃を買うようになったと指摘する。様相を一変させたのは新型コロナウイルスだった。
「肌の色や社会的背景、経済状態に関係なく、みんなが『もし来週食べるものがなくなったら、自分自身と家族を守るためにどうすればいいのか』と自問するようになった」(スミスさん)
NAAGAの会員数は、月間約800~1000人のペースで着実に増えている。
銃の販売が増える要因はほかにもある。民主党がホワイトハウスを奪還すると銃の販売が増えるのは珍しい現象ではなく、オバマ元大統領が選出された08年と再選された12年にも急増していた。
以前の販売数過去最高を記録した16年は、銃の愛好家が大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン元国務長官の当選を懸念した年と重なっていた。