バイデン氏が打ち出す「バイデノミクス」とは
(CNN) レーガノミクスが席を譲るときが来た。バイデン米大統領が自らの経済政策「バイデノミクス」を前面に押し出している。
バイデノミクスは「トリクルダウン」政策(富裕層や大企業から富がしたたり落ちるという政策)の考え方を拒絶し、中間層を重視する内容。2024年大統領選に向けたバイデン氏の選挙活動の目玉になるとみられる。バイデン氏は28日にシカゴで行った演説で、バイデノミクスの成果を強調した。
トップダウンではなく、中間層の拡大と低所得層の底上げにより経済を成長させるというのがバイデン氏のスローガンだ。
トリクルダウン経済学はレーガン大統領の政策の中心にあった考え方で、共和党の議員にとっては今も指針となっている。通常は富裕層や大企業への減税が軸になる。賛成派はこうした恩恵が中間層や労働者に波及し、経済成長を後押しすると主張するが、多くの専門家からは、全国民を底上げする効果があるかどうかに異論も出ている。
バイデン氏は今回、供給重視のトリクルダウン経済学は雇用喪失と中間層の空洞化につながると主張。バイデン氏は以前から中間層を重視しており、オバマ政権の副大統領時代には「中間層タスクフォース」の議長を務めていた。
バイデン氏は「可能な限り明確に言おう。トリクルダウン政策は中間層を損ない、米国を損なってきた」と発言。バイデノミクスの財源を捻出するため、改めて富裕層や大企業に相応の税負担を求めた。
ただ、バイデン氏は国民に自らの経済政策を売り込むのに苦労している。CNNの委託を受けた世論調査会社SSRSの5月の調査によると、米国民の3分の2はバイデン氏の経済政策に不満を示し、4分の3超は経済が不調に陥っていると回答した。
政権や複数の当局者は既に、バイデノミクスの概要を示している。ホワイトハウスが配布したファクトシートには大統領のこれまでの取り組みが列挙されているものの、新たな施策は含まれていない。
以下にバイデノミクスの三つの原則を挙げる。
米国内の公共投資
米国家経済会議(NEC)のブレイナード委員長は27日、ホワイトハウスで開かれた記者会見で、バイデン政権はインフラやクリーンエネルギー、半導体に注力してきたと説明した。
ファクトシートによると、これらの取り組みには民間投資を呼び込む目的がある。バイデン氏が21年に大統領に就任して以降、こうした取り組みは5000億ドル(約72兆円)近い民間セクターの投資を生んできた。
バイデン政権は一例として、21年以降に製造施設の建設投資が倍増したことを強調。政権が成立させた「インフラ投資雇用法」や「インフレ抑制法」、「CHIPS法」には、直接投資や官民による製造施設建設への税制優遇装置が盛り込まれている。
またバイデン氏は今週前半、各州が高速インターネットサービスに対する連邦政府の拠出金420億ドル超を受け取ると明らかにした。より多くの米国民にインターネット接続を提供し、デジタル格差を解消する狙いがある。
米国の労働者に力と教育を与える
ブレイナード氏によると、バイデン政権は4年制大学の学位を必要としないものを含め、労働者が未来の仕事に備えるための取り組みを行ってきた。バイデン氏は労働組合支持の姿勢を打ち出し、職業訓練プログラムを創設している。
最近では高度製造施設への投資について議論するため、ノースカロライナ州のコミュニティー・カレッジ(地域住民向けの2年制大学)を訪問。「米国救済計画」に由来する雇用プログラムに5億ドルを投資したことに言及した。
バイデン氏はまた、政権発足以来1300万人の雇用を生み出した功績をアピール。失業率が過去最低に近い状態が続いていることや、アフリカ系およびヒスパニック、障害者の失業率が過去最低水準にあることについても功績を主張した。
政権はまた、労働市場に参加する生産年齢人口の割合がここ20年あまりで最高になっている点にも触れた。
競争を促進する
バイデン氏はまた、コスト削減と中小企業の公平な競争環境の確保を目的とした競争促進策にも注力している。
政権は今回、バイデン氏が21年に競業避止条項の禁止または制限を目的とした大統領令に署名したことに言及。連邦通商委員会は1月、雇用主が労働者に競業避止契約を課すことを禁じるルールを提案し、既存の合意の無効化も提案に含めている。
バイデン政権の当局者はまた、メディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険)受給者のインスリン費用を月35ドルに減らすインフレ抑制法の規定を強調し、いわゆるジャンクフィーを標的にしたバイデン氏の提案にも言及している。