トランプ氏長女、父や兄弟らが被告の民事詐欺訴訟で証言 NY州
(CNN) 米ニューヨーク州司法長官がトランプ前大統領やその息子2人などに対して起こした詐欺を巡る民事訴訟の公判で、トランプ氏の長女イバンカ・トランプ氏が8日、証言を行った。
司法長官側はイバンカ氏に対し、トランプ氏一族が経営するトランプ・オーガニゼーションへの融資実現で果たした役割や、父親から借りたペントハウスに関して尋問した。
6日に証言した父とは異なり、イバンカ氏が怒りを見せるような場面はなかった。
8日間に及ぶ証人尋問では25人が証言台に立った。トランプ氏一族からは、トランプ氏、長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏、次男エリック・トランプ氏、イバンカ氏が証言。前三者は本訴訟の被告だが、イバンカ氏は被告ではない。司法長官は損害賠償2億5000万ドル(約378億円)と、同州でのトランプ氏の事業認可取り消しを求めている。
8日の公判のポイントをまとめた。
司法長官側はドイツ銀行との融資交渉に焦点当てる
司法長官側は、ドイツ銀行によるフロリダ州のゴルフリゾートへの融資案件を中心にイバンカ氏を尋問した。
この融資は本訴訟の重要な柱で、トランプ氏は融資により毎年の財務諸表の提出が求められた。司法長官は、純資産の水増しと優遇利率実現を目的に財務諸表が改ざんされていたと主張する。
ドイツ銀行の融資の最終合意では、トランプ氏は保証人として最低25億ドルの純資産の維持が求められた。
以前の合意案では30億ドルの純資産が要求されたが、司法長官側が示した電子メールによれば、イバンカ氏が20億ドルへの引き下げを提案していた。
トランプ氏は融資を個人保証することで、より有利な条件を獲得できた。トランプ・オーガニゼーションは同リゾートへの融資で、同銀の商業不動産部門からそれと異なる条件を提示されていた。
イバンカ氏はペントハウスの資産価値評価に関わっていないとの立場
イバンカ氏は父親から借りていたニューヨーク市のパークアベニューにあるペントハウスの資産価値について、トランプ氏の財務諸表上、自身が有していた購入オプションの金額より1200万ドル(約18億円)あまり高く評価されていた理由を知らないと答えた。
訴状によると、イバンカ氏は同物件を850万ドルで購入できるオプションを有していたが、トランプ氏の財務諸表上では2080万ドルで計上されていた。
司法長官側はイバンカ氏に、自身の購入オプションの価値が父親の財務諸表に組み入れられていたかを質問。イバンカ氏は「1年半前に伝えた通り、彼の財務状況の明細に関与していないので、それが考慮に入っていたか否かは言えない」と答えた。
イバンカ氏は昨年の証言録取で、会社に財務諸表があるのは知っていたが、父親の個人的な財務状況の明細があるかについて「具体的な」記憶はないと述べていた。
イバンカ氏の証言は2人の兄弟の証言と一致する。ただ、兄弟は明細の作成に使われた情報を提供していた。
イバンカ氏夫妻の会話
イバンカ氏と夫のジャレド・クシュナー氏はともにトランプ前米政権の大統領上級顧問を務めていた。ワシントンに移る前は、2人とも不動産業に従事。クシュナー氏はトランプ・オーガニゼーションの仕事をしていなかったが、2人は仕事について話をすることがあった。
イバンカ氏は前述の電子メールに関連した質問を受け、夫が助言してくれることがあり、仕事の内容について話すことがあったと回答。司法長官側は、郵便局として使われた歴史的建物を改装してホテルにする案件で、米金融機関キャピタル・ワンからの融資条件の可能性を議論する電子メールのやりとりについて質問した。
クシュナー氏はメールの中で、よりよい条件を提示すると見込める別の投資銀行に対して、この取引を示すことも可能だと述べていた。
イバンカ氏は「このやりとりを覚えていないが、仕事のことで夫に見解を求めるのは珍しいことではない」と述べた。
司法長官側の弁論が終了
本訴訟では25人の証人が呼ばれた。トランプ氏の家族以外では、争点となっている案件に関与したトランプ・オーガニゼーションの幹部2人や社内外の関係者が証言台に立った。
トランプ氏の元個人弁護士で「フィクサー」だったマイケル・コーエン氏は、トランプ氏から自分や会社幹部が財務諸表の水増しを指示されたと証言した。一方、この幹部はそうした会合が行われたことはないと証言した。
判事は公判に入る前に、トランプ氏を含む被告に詐欺で責任があると認定。司法長官側はこの点で既に勝利を収めている。
判事は今後、トランプ氏らが詐欺的なビジネス慣行から得た不当な利益について、損害賠償額を検討することになる。
司法長官側は、ビジネス記録の改ざんや保険詐欺など、他の6つの主張についても立証を試みている。
トランプ氏チームの番に
公判は今後、トランプ氏側が防御を行う番となる。トランプ氏の弁護士は6日の同氏の証言時に、法廷職員の行動に言及し無効審理を申し立てる意向を示した。
ただ、この申し立てが認められる可能性は極めて低い。
トランプ氏の弁護士は8日のイバンカ氏への反対尋問で、今後の防御の方針をうかがわせる発言もした。弁護士は、電子メールの中で、ドイツ銀行はトランプ・オーガニゼーションを顧客に迎え入れることができて喜んでいる様子だと述べた。同行を含む銀行は返済を受けており、被害者は存在しないという論法だ。
この点司法長官側は、トランプ氏が詐欺的に認められた借入利率のせいで、銀行が数億ドルの詐欺被害にあったと主張している。
イバンカ氏は前述のリゾート案件について、ドイツ銀行にはリノベーションを行うビジョンを共有していたと発言。「彼らはとても興奮していた。我々の購入前に物件を訪問し、経験するためにチームを送り込んだ」と述べている。