米国の自殺率、「55歳以上の男性」で特に高い理由とは
(CNN) 米国の自殺率は55歳以上の男性で特に高く、全体平均の2倍を超えていることが、米疾病対策センター(CDC)の新たな報告書で明らかになった。
CDCが15日に発表した報告書によると、米国の自殺率は2019年から2年連続で下がった後、21年にまた上昇に転じた。
21年の自殺率を男女別、年代別にみると、55歳の男性で人口10万人当たり約30人と、全体平均の約14人を大きく上回っていた。
自殺のリスクが最も高かったグループは85歳以上の男性で、10万人当たりの自殺者数が56人近くに上っていた。
米ロチェスター大学で精神医学を研究するイェーツ・コンウェル教授によると、自殺の主なリスク要因としては抑うつ、病気、障害、孤独、死に至る手段の5つが挙げられる。複数の要因が重なれば、それだけリスクが大きくなる。
年齢が上がるにつれて病気や障害を抱えたり、社会的に孤立したりするケースが多くなるために、自殺のリスクが増大すると考えられる。
55歳以上の女性の自殺率もこの20年で上昇したが、男性に比べればまだはるかに低く、21年の統計では人口10万人当たり約6人だった。
専門家らによると、この男女差には自殺の手段が関係するとみられる。21年に自殺した65歳以上の男性のうち、少なくとも4分の3が銃を使っていたのに対し、同年代の女性では銃と毒物による自殺がほぼ同数だった。
17年の調査によれば、銃を所有している率は女性より男性、若年層より高齢者のほうが高い。また男性は軍の訓練や狩猟経験から、銃を使い慣れている傾向がある。米国の高齢男性にはベトナム帰還兵も多い。
コンウェル氏はさらに、男性は女性ほど多くの人と親しくなったり関係を維持したりするスキルがなく、孤独に陥りやすいという背景も指摘した。
同氏によれば、男性のアイデンティティーは仕事と結びついている部分が大きく、退職後はそれが失われてしまう。うつ症状が出た時にそれを認めたり、ケアを受けたりするのは男らしくないと感じる男性も多いという。
同氏はこの年代の自殺をめぐる統計について、「何年の余命が失われたか」という考え方をすれば、高齢者の命を軽んじることになると指摘。それは人生経験や知恵、知識を軽視することにもなると主張し、「私が代わりに使うのは、長年の人生経験が失われるという表現だ」と述べた。