中国、欧米の軍操縦士らの勧誘工作を強化 ファイブアイズが警告

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中国・珠海で開かれた航空機展示会に登場した中国軍の早期警戒管制機KJ500/Aly Song/Reuters/File

中国・珠海で開かれた航空機展示会に登場した中国軍の早期警戒管制機KJ500/Aly Song/Reuters/File

(CNN) 機密情報を共有し合う「ファイブアイズ」を構成する米英豪らの5カ国は13日までに、中国が自国空軍の操縦士の訓練などに当たらせるため西側諸国のパイロットや他の軍人らの引き抜き工作を強化していると警告する共同声明を公表した。

米情報機関の米国家防諜安全保障センター(NCSC)高官は、工作は積極的に進められているとし、西側諸国政府による最近の行動で一定の歯止めをかけたものの、これに対抗する中国人民解放軍の新たな画策も続いているとした。

米政府当局者によると、西側諸国の戦闘機パイロットは空中戦の戦術から空母への着艦方法までのあらゆる分野で中国軍に教示し得る貴重な情報を握っている。逆に言えば、西側の空中戦闘戦術などを相殺し得る戦術作成の機会を中国側に許すことにもつながるとした。

ファイブアイズにはこの他、カナダとニュージーランドが加わる。今回の警告を発した米国家情報長官室は、中国は西側の空軍パイロットらを引き込むため中国軍との関係を伏せる民間企業を隠れみのにしていると指摘。

ヘッドハンターあるいはパイロット募集などの専門的なネットワークサイト経由で接触を試み、高額報酬の好条件や外国製航空機の操縦の機会などを持ちかけていると説明。特に狙われているのは、軍の操縦士、機関士、航空作戦統制要員や西側の軍事戦術に通じる技術的な専門家とした。

米政府当局者によると、「窓口」となっているこれら民間企業は名目上、独立的な業務への従事をうたっている。南アフリカ、シンガポールやラオスのような第三国に設立されているが、このルートで確保した西側諸国でパイロット経験を持つ、人数にして少なくとも数十人規模が中国軍関係者の訓練に関与しているという。訓練を終えた中国軍関係者は本国に戻り、今度は教官役としてより多くのパイロットの教練に当たることになる。

米国はこれまで、第三国にあるこの種の民間企業に制裁を科すなどして中国側への情報流出の封じ込めを図ってきた。しかし、NCSC当局者によると、中国は米国のこの対抗策にも適応し、異なる国に異なる名前を持った企業を出現させることで圧力をかわしているとした。引き抜きのための接触の手口なども変えているという。

中国は西側の航空戦術に対処するための操縦士の練度や技術的能力の達成に難があるとの指摘はこれまで出ており、航空作戦の遂行能力の向上に長年取り組んできたとされる。台湾の潜在的な軍事制圧もにらみ、空海面の兵力増強にも手を打ってきた。

米軍制服組トップのブラウン米統合参謀本部議長は空軍参謀総長時代だった昨年9月、空軍に宛てた書簡で外国企業が中国人民解放軍を助けるため「米国や北大西洋条約機構(NATO)加盟国が訓練した軍の人材を勧誘している」とも警告。今年1月には、米国とNATOが会合を開き、中国の引き抜きに対抗するための方策を話し合ってもいた。

中国による欧米の戦闘機操縦士の誘い込みについては既に摘発された事例もある。元米海兵隊パイロットが2022年10月、人民解放軍に空母への着艦方法を教えていたとの疑いで豪州で逮捕される事件が発覚。同被告は中国で6年間働いていたとされ、17年の起訴状によると、米国籍にあった09年11月から12年11月の間にも中国人操縦士を訓練していた。

現在は豪州籍を持つ被告は米武器輸出管理法違反に問われている罪を否認している。米側は被告の身柄送還を求めている。

米国内でも最近、中国へ機密情報を漏出させた疑いで逮捕される米軍兵士も目立っている。3月には米軍の先端兵器の機密情報を4万2000ドルで売り渡していた米陸軍軍曹が訴追されてもいた。

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