トランプ氏を選んだ米国民の意識の変化とは 出口調査が浮き彫りにした分断国家
(CNN) 米大統領選でドナルド・トランプ氏の歴史的な再選が決まった。いずれもトランプ氏が共和党候補だった2016年、20年、24年のCNN出口調査を比較すると、民主党のカマラ・ハリス副大統領が経済問題に足を取られ、人工妊娠中絶の権利で支持を獲得しながら女性層の支持拡大につなげられず、ラテン系の有権者、特に男性がトランプ氏になびいた状況が浮かび上がった。
24年の出口調査は5日の投票日のほか、期日前投票や不在者投票で一票を投じた有権者2万2914人を対象に実施した。
ハリス氏に対する女性層の支持率は、同じ民主党の大統領候補だった20年のジョー・バイデン大統領も、16年のヒラリー・クリントン元国務長官も下回った。トランプ氏は男性の間で優位を保った。
ラテン系の有権者、特に男性は16年以来、民主党候補からトランプ氏へと流れており、今年初めてトランプ氏が逆転した。20年はバイデン氏が23ポイント差でラテン系の支持を勝ち取っていたが、今回はトランプ氏が逆転。ラテン系の女性は依然としてハリス氏支持が上回ったものの、クリントン氏やバイデン氏の時と比べると差は縮まった。
ハリス氏は黒人の間では男女とも圧倒的リードを守った。白人男性の間でトランプ氏のリードは縮小した。
大卒資格を持たない白人の有権者は以前からトランプ氏の強力な支持基盤で、その状況は変わっていない。変化が起きたのは大卒の白人だった。そうした有権者は16年はトランプ氏支持が僅差(きんさ)で上回っていたが、24年はハリス氏が逆転。特に大卒女性の支持率はハリス氏が15ポイント差で上回り、バイデン氏やクリントン氏を抜いた。一方、学歴を問わず、ハリス氏は非白人有権者の支持を減退させた。
若者は圧倒的多数が民主党を支持したものの、支持率は縮小した。一方でハリス氏は、伝統的に共和党に傾いていた65歳以上の有権者の間で支持を伸ばした。
20年に地方で一部の支持を失ったトランプ氏は、24年は全面的に返り咲いた。都市部の民主党支持は変わらず、郊外では選挙結果を左右する激戦が続いた。
経済をめぐっては、20年はコロナ禍の真っただ中だったにもかかわらず景気の良し悪しの判断が二分されていた。しかし24年は有権者のおよそ3分の2が景気が悪いと回答。この感情がトランプ氏の追い風になった。
自分の支持する人物がホワイトハウスにいるかどうかに基づいて、自分の状況が良くなったか悪くなったかを有権者が判断するのは理にかなっている。自分の現在の状況が4年前より悪くなったと答えた有権者は、20年は約5人に1人にとどまっていたが、今年はほぼ半数に増えた。トランプ氏はそうした有権者に圧倒的に支持された。
人工妊娠中絶の権利をめぐっては、16年の時点ではロー対ウェイド判決に基づき、憲法で認められた中絶の権利が全ての女性に保証されていた。しかしトランプ氏の最高裁判事任命により、その権利は失われた。人工妊娠中絶は合法であるべきだとする米国民は、20年は約半数、2024年は約3分の2を占めた。しかしその見解は、必ずしも大統領選の投票とは一致していない。中絶は合法であるべきだとした有権者の約半数が今回、トランプ氏を支持した。
民主党はリベラル派有権者の支持をさらに伸ばし、トランプ氏は保守派の支持をさらに伸ばしている。中道派は依然として民主党のハリス氏支持が上回ったものの、20年に比べると差は縮まった。
対立候補への反対よりも、自分が選んだ候補を支持して一票を投じたという有権者は、トランプ氏支持者に傾いており、支持者の間のトランプ人気ぶりを見せつけた。対立候補への反対を動機に一票を投じたという有権者は、ほとんどがハリス氏支持だった。全体ではおよそ4分の3が、対立候補への反対よりも、自分が選んだ候補を支持して一票を投じたと答えた。
トランプ陣営の戦略は、普段は政治に参加しない有権者を動かすことにあった。その戦略は奏功した。初めて投票する有権者は、20年はバイデン氏支持が上回っていたが、24年は逆転してトランプ氏支持が上回った。ただし、初めて投票したという有権者は、20年よりも24年の方が少なかった。