米南部で銃殺による死刑執行、2010年以来 薬物注射と電気椅子を拒否
米南部で銃殺による死刑執行、2010年以来
サウスカロライナ州コロンビア(CNN) 米南部サウスカロライナ州の矯正当局は7日、2人を殺害した罪で有罪判決を受けたブラッド・シグモン死刑囚(67)の刑が銃殺隊によって執行されたと明らかにした。米国で銃殺による死刑が執行されるのは2010年以来。
米非営利団体「死刑情報センター」によると、1976年に死刑制度が復活して以降、銃殺による執行は全米で4例目となる。
シグモン死刑囚は薬物注射や電気椅子ではなく、銃殺による執行を選択した。7日の記者会見で当局者が明らかにしたところによると、米東部時間午後6時8分、医師により死亡が確認された。
シグモン死刑囚は2001年、元交際相手の両親を撲殺した罪で有罪判決を受けた。両親を殺害後、元交際相手の女性を銃で脅して拉致したが、女性は脱出した。
弁護士を通じて公表された最後の声明で、シグモン死刑囚は「私の最期の言葉は愛の言葉、私と同じキリスト教徒に死刑廃止への協力を呼びかける言葉にしたい」と表明した。
さらに、許しや法を強調する聖書の複数の文章を引用。「新約聖書のどこにも、他人を殺す権限を与えている箇所はない」と指摘した。
シグモン死刑囚を担当する弁護士の一人は執行直後、「怖ろしく暴力的な死だった」と振り返った。
弁護士は声明で、「彼は3発の銃弾が骨を砕き、心臓を破壊することを承知のうえで銃殺刑を選んだ」「だが州が薬物注射で3人の死刑を執行し、長時間のおそらく苦悶に満ちた死を強いた後となっては、これ以外に選択肢がなかった。彼は3人を兄弟同然に愛していた」と説明。23年間の服役中に死刑囚が暴力に及ぶことはなく、「信仰に身をささげ、周囲の人のために尽くしていた」と指摘した。
弁護士はさらに、薬物注射に用いられる薬剤の情報提供を州が怠ったと主張。「シグモン氏が求めていたのは、これらの薬剤が期限切れや希釈、腐敗していないという保証だけだ。これは私たちの誰もが服用する薬や食べ物について気にするのと同じことであり、死刑の手段であればなおさらだ」と述べた。
執行予定時刻の数時間前、シグモン死刑囚が収容されていた施設の外には抗議者が集まり、死刑廃止を訴えた。抗議者が掲げた横断幕には「すべての命は尊い」「殺しはもうやめよう」と記されていた。
サウスカロライナ州のマクマスター知事(共和党)は7日夕、死刑囚側から寄せられた恩赦の請求を退けた。死刑囚の弁護団は知事に対し、仮釈放なしの終身刑に減刑するよう求め、「シグモン氏は未診断の遺伝性精神疾患に苦しむ中で罪を犯し、裁判にかけられた」と主張した。
米連邦最高裁も同日、死刑執行の差し止め請求を退けた。最高裁は理由を示しておらず、反対意見も記載されていない。