ナチス収容所から生還した最高齢の女性、110歳で死去
(CNN) ナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を象徴する強制収容所から生還した最高齢の生存者とみられていた女性が、23日に死去した。110歳だった。
この女性は現在のチェコの首都、プラハ出身のアリス・ヘルツゾマーさん。ピアノの才能があり、第2次世界大戦中に送られたプラハ郊外のテレジエンシュタット収容所ではナチスのために演奏する音楽隊の一員となった。「音楽が私の命を救った」と題したドキュメンタリーが、今年の米アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門にノミネートされている。
アリスさんはドキュメンタリーの中で、「私の世界は音楽。ほかのことをしたいとは思わない」と話した。収容所時代も「演奏さえできれば悲惨なことにはならないと分かっていた」と振り返り、「音楽は最も素晴らしい芸術。私たちを平和と美と愛の島へ連れて行ってくれる」と語っていた。
アリスさんは教養のある愛情豊かなユダヤ人家庭で育った。母は、作曲家グスタフ・マーラーと親交があり、アリスさん本人も作家フランツ・カフカの幼なじみだった。母と夫がポーランドにあるアウシュビッツ収容所のガス室で殺された後、アリスさんは5歳の息子とともにテレジエンシュタットに収容された。収容所が1945年5月に旧ソ連軍によって解放され、2人はプラハに戻った。
近年はロンドンのアパートでひとり暮らしをしていた。ドキュメンタリーの紹介映像には、笑顔のアリスさんが映っている。最期は家族に見守られて息を引き取ったという。