プーチン大統領による中南米歴訪、その狙いは
ロシア科学アカデミー中南米研究所のウラジミール・ダビドフ所長は「ロシアは米国の対抗軸になることを目指しているが、あくまで他国を巻き込んでいく形だ」と分析する。
南米訪問の目的のひとつは貿易拡大だ。ロシアとブラジルの貿易は過去2年間、低迷が続いていたが、報道によると今回、ロシアの大手国有石油会社ロスネフチなどがブラジル企業と間に協定を結んだ。
一方、キューバとアルゼンチンでは、ロシアのエネルギー各社が大型契約に署名。さらにロシア国営原子力企業のロスアトムも、アルゼンチンのアトーチャ原子力発電所に3号機を建設すべく、入札競争を展開している。
ベネズエラとの経済関係を深化させる姿勢も鮮明化している。プーチン大統領は今回、同国を訪問しなかったものの、マデュロ大統領とはブラジリアで会談。ロスネフチがエネルギー関連事業の拡大の一環として、ベネズエラにおける石油採掘事業や油田施設を買い取ることで合意した。
中南米におけるロシアの野心は貿易だけにとどまらない。プーチン大統領は今回の訪問中、米国に対抗して運用されているロシア版GPS(全地球測位システム)の「GLONASS(グロナス)」を盛んに売り込んだ。この結果、アルゼンチンとキューバがグロナスの高高度衛星ナビゲーションシステムを導入することに決まった。