オキーフ氏らにノーベル医学・生理学賞 「脳内GPS」の細胞発見
(CNN) スウェーデンのカロリンスカ医科大は6日、今年のノーベル医学生理学賞を、脳内で自分がいる位置や移動先を認識するのに使われる細胞を発見した英研究者ら3人に贈ると発表した。
受賞者は米国生まれの英神経科学者、ジョン・オキーフ氏と、ノルウェーのマイブリット・モーザー、エドバルド・モーザー夫妻。新たに発見された細胞はいわばGPS(全地球測位システム)のように、自分が今どこにいるのか、どこへ向かっているのかを把握し、記憶に残す機能を持つ。
実験にはラットの脳を使ったが、人間の脳にも同様の細胞があることはすでに判明している。まずオキーフ氏が1971年、ラットが特定の場所にいる時だけ反応を示す神経細胞を見つけ、「場所細胞」と名付けた。
モーザー夫妻は2005年、これとは別に正確な位置や経路を把握する働きを持つ「グリッド細胞」を発見。さらに、場所細胞とグリッド細胞の働きがどのように統合されるかという仕組みを突き止めた。
極端に単純化すれば、場所細胞はA地点とB地点を脳内にマークし、グリッド細胞がA地点からB地点への移動を手助けしているとも言える。
細胞は脳の奥で記憶や方向感覚をつかさどる左右一対の海馬や、その周りの皮質にある。アルツハイマー病では初期の段階でこれらの領域が委縮し、道に迷うなどの症状が現れることから、オキーフ氏らの成果が症状の研究に役立つ可能性も高い。
同氏らの研究はまた、脳の高度な認知機能を細胞レベルで説明した点でも重要性が認められた。
賞金として贈られる800万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)は、オキーフ氏とモーザー夫妻が半分ずつ受け取る。それぞれの研究成果を反映した割合になったとみられる。
今年のノーベル賞はこのあと、7日に物理学賞、8日に化学賞、10日に平和賞、13日に経済学賞が発表される。