滑走路付近には管制塔も照明施設も、米軍の制服姿もない。ただ周りを囲む盛り土と、地ならしのトラクターが見えるだけ。警備役の地元住民が2人、日なたでたばこを吸っている。だがカメラを回し始めた直後に、YPGの治安部隊「アサイシュ」の隊員2人がトラックで現れ、取材班は離れた場所へ誘導された。
「ここは立ち入り禁止の軍事区域だ」と1人が言う。ハサカでは、ISISによる自爆テロも珍しい事件ではない。
米国はこの滑走路を使って、クルド人やアラブ系部族、そしてこの地域に展開する小規模な米軍特殊部隊に物資を届ける計画だ。
米国防総省は建前上、シリアの飛行場を「占領」してはいないとの立場を取る。一方で米中央軍の報道官は先月、「駐シリア部隊は常に後方支援の効率向上を図っている」と強調した。
米国にとって、2万5000人規模の戦闘員を展開できるYPGは地上での有力な戦力となりつつある。YPGは2014年、有志連合による空爆の援護を受けて、トルコ国境の要衝アインアルアラブ(クルド名コバニ)からISISを撃退。その後もさらに広大な土地を奪還し、今ではトルコとの国境地帯を大部分掌握してISISと外部との往来を阻止している。
ただし米国は、YPGに対する武器の直接供給には慎重な立場を示してきた。トルコがYPGをテロ集団とみなし、国境付近でこれ以上勢力を拡大することは認めないと明言しているからだ。米国はYPGとトルコの間で微妙なバランスを保つことを強いられている。