イラク北部ニナワ州(CNN) イラク軍のT大尉は狙撃ライフルをトラックの窓から垂らし、「戦士の歌」を口ずさんでいた。この歌を聴くとT大尉は、フセイン政権崩壊後、米軍がイラク軍治安部隊の再建に着手していたときに出会った米国人教官のこと思い出すという。
T大尉の年齢は30代半ば。家族の安全への懸念から、階級と最初のイニシャルだけを掲載してほしいという。顔は黒いマスクで覆っている。もしイラク軍と共にいることをISISに知られれば、家族が犠牲を払うことになる。
T大尉が最後に家族に会ったのは2年近く前。このとき、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」がニナワ州の一家の住む村を制圧した。「家族のところまで車で10分の距離にいることもあるが、会いに行けない」「神の助けを借りてすぐに家族を解放する。今すぐにだ」と話す。
イラク軍はこのほど、ニナワ州の複数の村をISISから奪還することに成功した。村はイラク第2の都市であるモスルの南にあり、今回の奪還はモスル解放に向けた作戦の第1段階と位置づけられている。モスルは2014年夏、イラク軍が持ち場を放棄し逃走したことを受け、ISISの手に落ちた。