緊張高まるチベット――10年ぶりの現地取材で見えたもの
ニンティでは世話役から新たに建設された村に案内された。チベット風の外観を持った店舗やレストランが配置される見通しで、近く観光地としてオープンすることが予想されている。村を建設したのは中国企業。入居する店舗の大半も中国系となる見込みだ。
この場所には長年、チベット族の居住地があったが、村民たちは強制移住させられたという。当局者によれば、村人たちも望めば菓子や茶の販売が許される見通しだという。
CNN取材班は、政府の補助金で小さな農場を改修して観光客用のゲストハウスにした女性にも話を聞いた。政府の世話役が取材班の背後を歩き回り、女性の答えをメモに取っていた。
経済開発や漢族の流入がチベット文化に負の影響を及ぼしていると思うかとの質問に対し、 女性は気まずそうな笑みを浮かべるばかりで、分からないと答えた。
この女性のように言葉が少なくなるのはチベットではごく普通のことだ。活動家らによれば、反政府的な発言をすればすぐに取り調べを受けるか、収監される可能性もある。
アムネスティ・インターナショナルのベクリン氏は、最大400人のチベット族が12年以降、宗教の自由の欠如や経済的な不平等に抗議して拘束されたと指摘。「平和的な方法ですら抗議の声を上げる場所が一切ない点は、今後もチベット社会に深い怒りを植え付けていくだろう」と述べる。