シンガポール、国立大教授を国外追放 外国政府利する「工作員」
(CNN) シンガポール内務省は4日、シンガポール国立大リー・クアンユー公共政策大学院に在籍する米国籍の教授とその妻の入国許可を取り消し、今後の再入国も禁止すると発表した。外国政府のために影響力を行使する工作員として活動したことを理由に挙げている。
同省の声明によれば、黄靖教授は同大学院での高い地位を利用し、シンガポールの費用で外国政府の計略を意図的かつひそかに進めようとしていたという。外国政府の国名は明らかにされていない。
声明はさらに、黄氏が外国の情報機関工作員と協力していたと言及。「シンガポール国内政治に対する転覆活動と外国からの干渉に当たる」と述べた。そのうえで、黄氏とその妻がシンガポール滞在を続けるのは望ましくないとし、両者の再入国を永久に禁止すると表明した。
黄氏は米国籍で、米中関係が専門。米国と中国の大学で学び、米ハーバード大で政治学の博士号を取得した。シンガポール国立大のウェブサイトに記載されていた経歴では、「中国政治や中国の外交関係、アジア太平洋地域の安全保障問題で国際的に認知された専門家」とされていた。現在は経歴が削除されている。
地元紙ストレーツ・タイムズによれば、この種の事例はこの20年近くで初めてだという。
CNNは黄氏にコメントを求めているが回答はない。
内務省によると、黄氏はシンガポールの著名人や影響力を持つ人物に近付き、外国政府の秘密情報と称する情報を渡していた。また、この活動のために人も雇っていたという。
こうした情報のいくつかはシンガポール政府高官にも届いた。政府方針を変更する権限のある者だったが、政府がこの情報に基づいて行動することは避けたという。
内務省は黄氏の妻も黄氏の活動を認識していたと見ている。
シンガポール国立大学の代理人は黄氏について、事案が解決するまで無給の停職扱いとなっていると説明。ただ、入国許可の取り消しの事態に鑑みて、復帰は難しいだろうとの見解を示した。また、本件は重大な懸念事項であり、外国政府による干渉は容認できず同大は内務省に全面協力していくとも述べた。