最前線の兵士、戦意の源は ISISとその敵対勢力に聞く
(CNN) スコット・アトラン氏と同氏の調査チームは、戦闘の最前線に近いイラク北部の都市キルクークで、捕らえられた過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の戦闘員らと向き合って座っていた。
戦闘員らに質問が書かれたカードを手渡したが、「彼らは文字通りカードを投げ捨て、回答を拒否した」とアトラン氏は言う。認知人類学者の同氏は、研究機関アーティス・インターナショナルで研究責任者を務めるかたわらミシガン大学とオックスフォード大学で教鞭を執る。
アトラン氏が驚いたことに、戦闘員らはそれでも質問への回答には前向きだった。上述のやりとりは、たまたま特定の質問の意味を一部の戦闘員らが理解できなかったために起こったのだという。
アトラン氏と調査チームは、大義のために戦い、死ぬこともいとわない人々を突き動かすものが何かをより深く理解するため、2~3年前から、捕らえられたISISの戦闘員、クルド人非合法組織「クルディスタン労働党(PKK)」のメンバー、さらに最前線でISISと戦っている他の兵士らを対象に聞き取り調査を行ってきた。
その結果明らかになったのは、3つの重要な要素がISISの戦闘員並びに彼らと戦っている兵士の両者を突き動かしているという点だった。それらの要素とは、聖なる価値への深い献身、それらの価値のために家族を捨てる覚悟、そして自分が属する組織やコミュニティには世俗を超えた強さがあるとする認識だ。
この結果は、英科学誌ネイチャー・ヒューマンビヘイビアの誌上で発表された。これを見れば、聞き取り調査を行ったISISの戦闘員らがなぜ当初の質問に苛立ったのかも説明がつく。
当初の質問は宗教的価値観に関わるものではなかった。しかしアトラン氏と調査チームが「精神性」や「価値観」に基づく新たな質問を作成したところ、ISISの戦闘員らは回答し始めたという。