台湾海峡の緊張
台湾と中国本土は70年以上前の国共内戦の後別々に統治されてきた。台湾に逃れてきたのは敗北した国民党だ。
中国共産党はこの2400万人が暮らす民主主義の根付く島を一度も統治したことはないが、不可分の領土と位置づけている。
19年には中国の習近平(シーチンピン)国家主席が台湾に「平和的な統一」を呼び掛けたが、武力行使の排除は拒否した。台湾にとって中国の軍事行動の脅威は常に懸念点となっている。
もろい現状維持の状況は約30年前に出現した。当時の台湾の国民党政権と中国は「一つの中国」に関する合意をし、双方が異なる解釈を適用してきた。政治は後回しにすることで、台湾海峡をまたぐ経済や文化面の交流が数年間盛り上がった。
だが、蔡英文(ツァイインウェン)総統や民進党は「九二共識」として知られるこの合意を長年にわたり拒絶。蔡氏は中国に対し、台湾の主権と市民の意志を認めるように繰り返し求めている。
呉氏は香港の状況を見れば中国との統一は受け入れられないと発言。台湾の主権を守ることが、世界で唯一の中国語を話す民主国家としての地位を守るうえで重要になると語った。
香港の国家安全維持法は、香港の民主化運動を沈静化するために適用されたとも指摘。この包括的な法律で、国家転覆や分離独立、外交勢力との結託と当局にみなされる行為はすべて犯罪となり、報道の自由の侵害や民主派の活動家の投獄にも同法が適用されていると語る。
「香港の状況を見れば、これは現代の悲劇だ」(呉氏)
香港最大の民主派のタブロイド紙「リンゴ日報」の廃刊にも触れ、特別行政区での自由に対する寛容さが失われている兆候だと語った。
「台湾は既に民主主義国家だ」「台湾の人々の圧倒的多数があることにノーと言えば、その考えを受け入れる政治指導者はいない」
呉氏は台湾の人々が、民主的に選ばれた総統や議会、別個の軍隊、独自のビザやパスポートを発給する権限などの現状の維持を望んでいると言及。そして「現状維持には中華人民共和国による運営や支配のない台湾も含まれる」という。
ただ、台湾が台湾海峡をはさんだ平和の実現に向けて協力する意思はあるとも発言。中国の指導者に対し、持続可能で平和的な共存を目指してともに努力するように呼び掛ける。
「台湾と中国の間に平和的で礼節のある関係を築くこと、そして対話を始めることは両者の共同の責任だと思う」
「台湾の人々が欲しいのは平和であり、台湾政府も同じだ。平和のほかに台湾と中国の間で対話をしたい。もちろん両者に責任がある」