オミクロン株で「時間との戦い」 各国が渡航制限、南アは反発
(CNN) 南アフリカで見つかった新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」について、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は28日、世界が「時間との戦い」を強いられていると指摘した。各国が次々とアフリカ南部からの渡航制限を発表するなか、南アのラマポーザ大統領らはこの動きに強い反発を示している。
フォンデアライエン氏はこの日、訪問先のラトビアで、科学者や製薬会社がオミクロン株の全容を把握するまでには何週間もかかるとの見方を示した。
主要7カ国(G7)の議長国を務める英国は28日、G7保健相の緊急会合を29日に開くと発表した。また英政府は同日、国内の店舗や公共交通機関の中で今週以降、マスク着用を義務付ける方針を明らかにした。
オミクロン株は南アで見つかってから、これまでに少なくともアフリカ南部のボツワナ、欧州のベルギー、オランダ、デンマーク、ドイツ、イタリア、チェコと英国、カナダ、イスラエル、香港の計12カ国・地域で確認され、さらに複数の国で疑い例が報告されている。
オランダ当局は28日、アムステルダム・スキポール空港で南アからの渡航者少なくとも13人がオミクロン株感染の陽性反応を示したことを明らかにした。保健当局によると、26日に空港の検査で陽性反応を示した61人の検体を分析した結果、見つかった。今後さらにほかの検体からオミクロン株が検出される可能性もある。
カナダでは南東部オンタリオ州のオタワで28日、初めて2人の感染が確認された。エリオット副首相兼保健相と同州のムーア最高医療責任者の共同発表によると、感染者は2人とも最近、ナイジェリアに渡航していた。両氏は連邦政府に対し、入国者には出発地にかかわらず、到着時の検査を義務付けるよう改めて呼び掛けた。
オミクロン株の出現を受けて、EUや日本、オーストラリア、米国、カナダ、ルワンダなど多くの国が、南アやボツワナ、マラウイなどアフリカ南部からの渡航禁止措置を発表している。
これに対してラマポーザ氏は28日、「わが国と姉妹国への不当な差別だ」と主張。「科学に基づく措置ではなく、変異株の拡大を防ぐ効果もない。関係国の経済をさらに損ない、パンデミックへの対応力や回復力を弱めるばかりだ」と訴えた。
南アの国際関係・協力省は、同国が優れた科学の力で変異株を発見、報告したことは称賛に値するはずで、処罰の対象として責められるべきではないと指摘。同国は渡航にかかわる世界基準のルールにも従い、感染者の出国は一切許していないと強調した。
マラウイのチャクウェラ大統領もフェイスブック上で「いわれのない」渡航禁止措置を批判し、新型コロナには「アフリカ嫌いの感情でなく、科学に基づいた」対応が必要だと述べた。
英サウサンプトン大学の専門家、マイケル・ヘッド上級研究員も、CNNとのインタビューで南アのゲノム解析技術を極めて高く評価し、同国のように事実を正しく報告した国が非難されるのはおかしいとの考えを示した。
ヘッド氏はそのうえで、渡航禁止措置はうまく活用すれば、各国にとって多少の時間稼ぎになると指摘。この2~3週間をワクチン接種の加速や治療薬の確保、検査体制の拡充などに使うことはできると述べ、「渡航禁止の措置を講じただけで仕事が終わりと言うようでは、だれのためにもならない」と断じた。