微妙なバランス
リトアニア国内では、同国の強硬路線が既に結果を生んでいると考える人もいる。当局者はフランスが他国と並んでリトアニアを支持し、中国に状況の緩和を求めているという事実を指摘する。これは特に今重要で、フランスはEUの持ち回り制の議長国を担当し、また大統領選のさなかにある。先月にはスロベニアも台湾との貿易を強化すると発表した。
EUの執行機関である欧州委員会のある高官はCNNに、EUの立場としては、リトアニアは一つの中国原則に反しておらず、もし中国が敵対的姿勢を続けるならば一つの中国原則に反している証拠を示す必要があるというものだと説明する。リトアニア当局者はこうした状況を勝利だと位置付ける。
だが、誰もがこの戦略が大きな成功を収めていると考えているわけではない。リトアニア国内でさえ、そう考えない人がいる。
リトアニアのナウセーダ大統領は台湾代表事務所の開設を支持する一方で、その名称は不必要に挑発的で、リトアニアは今、その「結果」への対応を迫られているとの考えを示す。
中国はこれに対し、過ちを認めるのはいいスタートだとしつつ、リトアニアはまだ一つの中国原則に反した状態にあるとの認識に立つ。
EUは最近、地政学的な問題で団結した行動をとるようになっている。苦い陰口をたたかれた数年を経て、英国の離脱や新型コロナウイルスの世界的流行の経験からEUの首脳が学んだのは、共通利益の分野における団結とは、リトアニアのような小国でも、世界で最も金と力がある国の一つに立ち向かうためにEUのメカニズムを利用できることを意味するという点かもしれない。
ただ、リトアニアの姿勢やそれと同調する姿勢をとるEUが、中国から譲歩を引き出せるかどうかはまた別の問題だ。歯に衣着せぬ国家主義的な中国国営のタブロイド紙「環球時報」の社説は最近、リトアニアが関係回復のために取るべき一連の措置を並べ、「彼らがどんな策を用いようと、中国は原則の問題で少しも譲歩するつもりはない」と警告した。
だが、専門家が一致するのは、たとえ可能性がわずかであっても、この件で中国から譲歩を引き出せる可能性がある方法は、欧州諸国が共同戦線を張ることだ。
長年の人権活動家で英国を拠点とする団体「香港ウォッチ」の運営責任者、ベネディクト・ロジャーズ氏は「中国が分断統治にたけ、各国を他国と争わうように仕向ける能力がある一方で、各国が団結して中国に対抗して立ち上がれば、中国のいじめ戦術の効力は弱まり、中国への圧力がより大きな影響力を持ちうる」と語る。
この争いは小さなものに見えるかもしれないが、ここで問題となっているのは、EUが中国との経済関係と、加盟国に対する義務や道徳上の価値観との折り合いをつける方法を探そうとしてきた何年にも渡る取り組みだ。そのバランスがあとどれほど持つのか、それが問題となる。
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本稿はCNNのルーク・マギー記者による分析記事です。