「彼はキエフに向かうと・・・」 不明兵士を探すロシア人、電話する先はウクライナ当局
クリスティナ氏はウクライナ首都キエフの非公開の場所から、ホットラインの目的について説明した。
「第一に、我々の目的は、だまされて行く先も理由も分からず我が国に来たロシア兵が親族を見つけるのを助けることにある。第二の目的は、この戦争全体を止める手助けをすることだ」
開戦当初に設置されて以降、ホットラインが鳴りやんだことはなく、2月24日以降に6000件以上の電話があったという。電話の発信地はロシア極東のウラジオストクからウクライナ国境に近いロストフ・ナ・ドヌまで多岐にわたる。
履歴からは一部の電話がロシア国外からかけられたことも判明。欧州全域のほか、バージニア、ニューヨーク、フロリダ各州を含む米国内からも電話があった。
CNNは米国から電話をかけた3人に話を聞き、実際にホットラインを利用したか、またウクライナ内務省から肉親に関する情報が得られたかを確認した。
取材に応じたバージニア州のマラットさんは、ウクライナ政府とつながりのあるテレグラムの安否確認用チャンネル上で、いとこの身分証の写真を目にしたと明かした。
このチャンネルはウクライナでの戦闘中に拘束されるか死傷したロシア人の情報に特化したもので、パスポートの写真や氏名、認識票、部隊の情報を掲載している。
マラットさんはいとこの運命について率直な認識を語った。「彼が戦死した可能性が高いことは分かっているが、遺体が見つかるとすればどこなのか情報を探している。それにもしかしたら、彼は生きているかもしれない」
ロシアのウファに住む家族はマラットさんに対し、息子を探せばロシア当局に報復される恐れがあるため、ホットラインに電話してほしいと依頼した。
「ロシアでは誰もがおびえているので、家族は誰からも連絡を受けないようにしている。法執行当局による追跡を恐れ、皆話すのを怖がっている状況だ」(マラットさん)
ますます明らかになりつつあるのは、ロシアのプーチン大統領が戦争に関する国内の情報を統制していることだ。死傷者数に関する発表はこれまで、498人が死亡したとするロシア国防省の無味乾燥な声明のみだ。
フロリダ州でCNNの取材を受けたもう1人の相談者、マリーナさんは、自分のおばはロシア国防省から何も情報を提供されていないと語る。
「家族は彼のことを探そうとしたが、誰からも回答がない」とマリーナさん。そこで、ウクライナのホットラインに電話することに唯一の望みを託したが、現時点でいとこに関する情報は得られていない。
ホットラインを担当する当局者らによると、電話をかけてきた人の大半は、息子や夫から予備役の訓練や軍事演習に派遣されると伝えられていた。侵攻開始直前の2月22日か23日に連絡が途絶えたケースが多いという。
キエフでホットラインの責任者を務めるクリスティナ氏は、受けた電話のことが頭から離れないと話す。
「ある父親から電話があった。彼の話では『子どもたちは消耗品、肉の盾として使われている。政治家や有力者がゲームに興じて自分たちの問題解決を図る一方で、子どもたちは死んでいく。誰かがそれで金もうけをしたいから、あるいは自身の野心を満たして世界の王になりたいからだ』と」