「彼はキエフに向かうと・・・」 不明兵士を探すロシア人、電話する先はウクライナ当局
ウクライナ・キエフ(CNN) 「お騒がせして申し訳ありません。兄弟のことで電話しております」
「私の夫について何か情報はありませんか」
「もしもし、安否確認にはこちらのホットラインに電話すればよろしいでしょうか」
ウクライナ政府が運営するホットラインに寄せられた電話の音声の一部だ。ロシアとウクライナの戦争に終わりが見えない中、父母や妻、きょうだいなどは必死の思いで愛する人を探している。
だが、電話の向こうの震える声が探しているのはウクライナ人ではなく、ロシア人兵士の情報だ。
音声記録はホットラインを運営するウクライナ当局者がCNNに独占提供した。相談者の声ににじむ絶望と不安からは、ロシア政府が戦争に関する通信をいかに厳しく統制しているかが浮かび上がる。
一連の録音では、多くのロシア兵が自分たちの予定や派遣理由を知らない様子であることがうかがえる。ロシア兵が家族との通信を禁じられているとの報道を裏付ける内容でもある。
ある妻は涙ながらに、悲痛な声で夫のことを尋ねている。
オペレーター ご主人から最後に連絡があったのはいつですか。
発信者 国境を越えた2月23日です。
オペレーター どこへ行くか言っていましたか。
発信者 彼はキエフに向かうと言っていました。
オペレーター 理由については何か言っていましたか。
発信者 いえ、他には何も言っていませんでした。
インターネット上では2月24日の侵攻開始以降、ウクライナの民間人や軍人がロシア兵に自宅への電話や、両親との通話を許可する動画が出回っている。
「生きてウクライナから戻る」と名付けられたホットラインはウクライナ内務省が設置した。同省はこの取り組みについて、人道目的とプロパガンダの道具としての両面があることを認めている。
ホットラインの運営を担うクリスティナ氏(仮名)はCNNに対し、安全上の理由から身元を報じないよう求めた。同氏は心理学者として訓練を受けた経歴を持つ。