線路上の「指揮所」、戦時下でも運行を続けるウクライナ鉄道の取り組み
薄暗い会議室を出た経営陣は、約130キロ離れた西部リビウに向かう1両編成の列車に乗った。車内の中央に長い会議テーブルがあり、それを取り囲む座席にはヘルメットや防弾チョッキ、ライフルケースが積まれていた。
ただ、通常は一般客の車両にスペースを見つけて、乗客の間に溶け込むことの方が多い。これらの列車は平時には時速160キロを出しているが、いまは大半の場所で60キロにスピードを落として運行する。定員を超える乗客を乗せているのが一因だ。
「できる限り多くの人を乗せるという決断は難しいものだった。不幸な事態になった場合に、より多くの人に影響を与えてしまう」。カムイシン氏の側近、オレクサンドル・ペルトソブスキ-氏はこう語る。
移動式の「指揮所」の内部。1カ所に長くはとどまらないと幹部らは話す/Christian Streib/CNN
また、低速運行の理由には損傷した線路にぶつかるリスクもある。線路が爆破されれば主要都市間の連絡は一時的に断たれるが、橋が破壊されればその路線は無期限に使用できなくなる。
軍隊経験のない人が大半を占める一般職員は時に、ロシアの砲撃のなかで線路の修理をせざるを得ない状況に直面する。
開戦後1週間のある日には、線路からわずか数メートルの位置に不発弾が落下し、安全に信管を外して撤去する必要に迫られた。
ペルトソブスキ-氏によると、侵攻開始からこれまでに従業員33人が死亡、24人が負傷。直近では12日夕に死者が出た。