偽の「住民投票」を前に住民が多数脱出 ロシア占領下の南部ヘルソン
ミハイロさんによると、兵士らは従軍経験のあるウクライナ人男性を探しており、建設業界で働くミハイロさんの荒れた手を見て軍人だと勘違いした。
ミハイロさんは地下で拷問を受けたと証言し、負傷を裏付ける医療記録をCNNに見せてくれた。
自身を殴った2人のうち、「1人が銃を取り出した」とミハイロさん。「本物だった。撃鉄が起きているのを見た。銃弾2発が発射され、コンクリートの壁に当たった」と語る。
「模擬処刑」の後、今度は別の兵士2人が入室してきた。
「彼らは口数が少なく、酔っていた。1人はボクサーだったようで、同じ部位を何度も殴られた。肋骨(ろっこつ)を6本折られ、肺が破裂した」
自分から軍事情報を聞き出せると信じて疑わない兵士らに与えた答えを振り返るとき、ミハイロさんは思わず笑い声になった。村と隣の街の間には少なくとも150の検問所がある、クリビーリフの南の農村部にはほとんど道がなく、ただ泥と野原が無限に広がるばかりだと、答えたという。数日後、両親が来てミハイロさんは解放された。
ヘルソンから脱出する理由は住民投票ばかりではない。ヘルソンの北と東に広がる農村地帯にロシア軍が進撃したことも、住民の北への移住を加速させている。
CNN取材班はヘルソンの南の村やその周辺で、2日間にわたり砲撃の影響を目の当たりにした。地元住民らは2カ月目に入った戦争の間、これまで誇りを持ってとどまっていた村から逃げ出さざるを得なくなっている。
コチュベイブカ村では74歳の母親の避難を手伝っていた男性が車を止め、自身の集落ではこの2時間の間に砲撃が激しくなったと明らかにした。
「村に残りたかったが、グラートロケット弾で状況が変わった」と語り、この攻撃で女性1人が負傷したと証言した。
かつて牧歌的な雰囲気だったウクライナ南部の地方部はいまや避難ルートになり、ゆったりとした時間が流れる生活は一変した。ロシアの侵攻の結果、住民が数十年前から知っていた風景はものの数時間で変えてしまった。