ワシントン(CNN) 訪米中のラトビアのリンケービッチ外相は15日、ワシントンでCNNの単独インタビューに応じ、欧州各国の首脳がロシアのプーチン大統領を挑発するとの懸念から行動を控えてはならず、国際社会はウクライナに戦争終結のために譲歩をさせるような圧力を掛けてはならないとの考えを示した。
リンケービッチ氏は、プーチン氏への挑発を恐れる首脳を名指しこそしなかったが、「プーチン氏が屈辱を受ける様子を見たくない、何らかの出口を提供するべきだと時折公言することでよく知られた人物」と言及した。フランスのマクロン大統領を指した発言とみられる。
マクロン氏は今月初め、「戦闘が停止したときに外交的手段を通じて出口を作れるように、我々はロシアに屈辱を与えてはならない」と発言していた。
リンケービッチ氏は、こうした方法は「理にかなうものではない」と述べ、「多くの首都で考え方を変える必要がある」との認識を示した。戦争終結に向けてプーチン氏に働き掛ける外交努力は結果が出ておらず、「(ロシア人は)戦うウクライナ人によってのみ止められる」と語った。
またウクライナでの戦争はロシアの指導者個人よりも大きな存在であり、国民の支持や、プロパガンダのチャンネルを通じた国民の洗脳なしには実行できないとも指摘した。
ウクライナを軍事支援する米国を称賛する一方で、欧州の同盟国は戦時の工業生産を拡大すべきだと主張。20年以上の軍縮小の後に、自分たちの防衛やウクライナへの武器提供が突然求められる事態になっているとも言及した。
リンケービッチ氏はさらに、「何人もウクライナに対して、ロシアに譲歩するように圧力を掛けてはいけない」とも発言した。停戦のための領土割譲などの譲歩は一定期間機能するかもしれないが、将来のロシアによる侵略を永続的に抑止できるかには疑問が残るとした。
「過ちを繰り返さないようにしよう。ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の拡大や、ウクライナをNATOや欧州連合(EU)に加入させないためにこの戦争をしているのではない。これはウクライナを破壊し、領土を獲得し、帝国を再興するためのものだ」(同氏)
将来の軍事侵攻を避けるためには、「ロシアの軍事や経済の機構を、軍事的攻撃作戦を実行できないような状態にする。そのような状態までロシアを持って行く必要がある」と述べ、制裁は現在の戦争の終結を実現できていないものの、将来の戦争抑止には有効だとの考えを示した。
今月末にはスペインのマドリードでNATO首脳会議が開かれる。リンケービッチ氏は、ラトビアはバルト諸国の安全保障強化のために実行されるべき具体的な措置に注目していると語る。
ロシアに対しては、そうした地域がNATOの領域であり、「1インチでも」譲らないという「明確なメッセージ」を送ることが極めて重要だと指摘。マドリードでの会議はその議論や決定プロセスの始まりに過ぎないと述べた。
同氏は「我々が避けたいのは、バルト諸国の一部が突然占領され、その後NATO軍によって解放され、新たなブチャやマリウポリが出現するという事態だ」「我々が内々で話をしているのは、罰を通じた抑止や防衛から、バルト諸国への進攻の否定を通じた防衛や抑止への変化だ」と語った。