コロナ拡大認めた北朝鮮、より大きな問題を隠蔽?
飢餓と第2の「苦難の行軍」
ただ、新型コロナであれ何であれ、病気は北朝鮮国民にとって最大の問題ではないかもしれない。
韓国に住む脱北者の女性(44)は、感染拡大が報じられた直後に北朝鮮の家族から連絡を受けた。新型コロナに関しては逆に、北朝鮮にいる家族の方が女性のことを心配していた。北朝鮮のプロパガンダの強力さの証しだ。
むしろ、女性の家族が心配していたのは食糧不足のことだった。
「1990年代の『苦難の行軍』の時よりも食糧事情が悪いと言われた。当時の状況がどれだけ難しかったかを知っているので、とても心配」
苦難の行軍とは、ソ連崩壊により支援物資の供給が途絶え、北朝鮮経済が打撃を受けた時期を指す。
人口の実に1割が餓死したと推計されており、死者数はさらに多いとの見方もある。
脱北者の女性は結局、餓死者が出ているか家族に聞かなかった。家族とやり取りするまれな機会に政治について話すことはまずないからだ。当局が聞いているかもしれない可能性が高すぎる。女性はCNNに対し、家族が報復に遭う場合を考えて氏名を報じないよう求めた。
国営テレビは先月、金総書記が薬局を訪れ、軍に医療物資の安定供給を命じる場面を報道。金総書記が正体不明の腸の感染症への対策として私物の薬を寄付する場面まで伝えた。
2011年に脱北した医師のチェさんからすれば、北朝鮮では真実が「輪ゴム」のように扱われる以上、こうした映像が報じられるのは予想通りだった。これはショーであって、それ以上のものではないと、チェさんは語る。
「北朝鮮当局は苦しんでいない。つらい時を過ごしているのは北朝鮮国民だ。生き残ることができれば良いが、死んでしまっては何にもならない」(チェさん)